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国際井上円了学会 第2回学術大会を開催

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国際井上円了学会第2回学術大会を開催

国際井上円了学会第2回学術大会写真012013年9月16日(月:敬老の日)、東洋大学白山キャンパス8号館7階125記念ホールにて、国際井上円了学会は第2回学術大会を開催した。当日は台風の影響で悪天候となったにもかかわらず、50名近い聴衆が集まる盛況な大会となった。
学術大会は、東洋大学学長でもある竹村牧男国際井上円了学会会長の挨拶から始まった。悪天候の中集まっていただいた聴衆へのお礼、海外から来日いただいた発表者へのお礼が述べられ、学会設立の経緯と東洋大学の取り組みが説明された。

国際井上円了学会第2回学術大会写真02続いて、一般研究発表が行われた。最初の研究発表は東洋大学大学院博士前期課程の寅野遼氏の「哲学の通俗化とは何か」であった。まず寅野氏は、「哲学は諸学問の中央政府」の役割をもち、社会と人間精神に利益を与えるという効用があるとという円了の哲学理解を紹介した。社会的利益とは、哲学を通じた無形の文明の発達と社会の安定である。そして人間精神に与える利益は、知力の練磨、思想の遠大化、情操の発達、人心の安定である。このような哲学を民衆に普及させるために、哲学の通俗化を目指したのが、井上円了なのである。しかし、井上円了は晩年、実践(向下門)を重視し、議論を精密に組み立てる向上門を軽視する傾向にあった。また、仏教に倣った哲学的宗教を推進した。この晩年の立場は、当初の円了の哲学理解と齟齬をきたすのではないかという問題点が指摘された。

国際井上円了学会第2回学術大会写真03二番目の発表は、相模女子大学非常勤講師の甲田烈氏による「円了妖怪学における「真怪」の構造」である。甲田氏は、円了の哲学的著作にみられる構造と、『妖怪学講義』に見られる構造を比較し、円了の「真怪」の意義を明らかにした。哲学には「唯物論」、「唯心論」、「理想」という三つの立場の発達があり、仏教にも「倶舎(唯物)」、「法相(唯心)」、「天台(唯理)」という三つの立場がある。同様に、妖怪学にも「物」「心」の相関である「仮怪(相対)」、「偽怪(人間)」、「真怪(絶対)」の三構造があり、哲学的著作と同じ構造がある。この三構造の動的な連関を指摘した上で、甲田氏は、「真怪」に、(1)妖怪の分類項目の一つ、(2)不可思議を探求する情動と知の極点、(3)あるがままの直接知、という三つの意義があることを指摘した。  

国際井上円了学会第2回学術大会写真04三番目の研究発表は、ミチョアカン大学院大学教授のアグスティン・ハシント・サバラ氏の「井上円了の地域教育とメキシコの教育」であった。ハシント・サバラ氏は井上円了の教育観について概観し、そこからメキシコの公教育が学ぶ点を指摘した。円了は、家庭教育、学校教育、社会教育の他に、自然的教育を重視した。自然的教育には、天文・気候など天から与えられる教育、地勢・地質など大地から与えられる教育、動植物などの生命から与えられる教育、遊戯と運動から与えらえる教育などが含まれている。一方、メキシコの教育は一般に九つの時代に分けられるが、そのどの時代においても、自然的教育が見落とされていた。文化的差異と異文化的なつながりの両者に配慮しつつ、円了の提言から多くのことを学ぶことができるだろうと結論付けられた。

国際井上円了学会第2回学術大会写真05休憩をはさみ、四番目の研究発表は、山形大学名誉教授の平田俊博氏の「井上円了のトランス・モダン―日本文化と三つの東大―」であった。発表タイトルに含まれる三つの東大とは、東大寺(世襲的貴族が支配する律令体制)、東京大学(受験エリートが支配する行政優位の立憲体制)、東洋大学(一般大衆が支配する脱エリート民主主義の時代で裁判員体制)を意味している。また、カール・ヤスパースと井上円了を比較しながら、東洋と西洋の両者を視野に入れた哲学史の考察についての功績が語られた。さらに、西周の哲学の構想の意義が示された。

国際井上円了学会第2回学術大会写真06研究発表の最後の発表者はカリフォルニア大学ロサンゼルス校教授のウィリアム・ボディフォード氏であった。「隠退した井上円了の精神修養する哲学」と題された発表では、哲学館と京北中学校の校長を辞した後の井上円了に焦点が当てられた。初めに、井上円了の卒業論文、哲学館のカリキュラム、哲学館事件などを概観した後、引退後の修身教会運動、哲学堂などについて詳しく検討された。とりわけ哲学堂については、その環境、そこで行われる儀礼、蔵書といった様々な観点から論じられた。特に哲学堂の蔵書は明治以前の日本の文化の在り方を伺える貴重な遺産であることを強調され、リポジトリでの好評を切に望んでいると訴えられた。

国際井上円了学会第2回学術大会写真07研究発表の後、北フロリダ大学名誉教授のジョン・マラルド氏による特別講演「日本の近代初期における西洋哲学の摂取」が行われた。マラルド氏は、西周と福沢諭吉の翻訳の努力から説き起こし、彼らが作り出した用語の新しさと難しさを指摘した。さらに井上哲次郎と井上円了の二人の哲学者の果たした役割を論じた。哲次郎は、陽明学、朱子学、古学を扱う三部作において、日本の儒学思想を歴史的文脈の中に位置づけ、哲学として論じた。さらに、現象即実在論を提唱し、西洋と東洋の哲学を統合する立場を目指した。円了は、仏教を哲学として論じ、両極端の中道をとる円了哲学を主張した。円了の著作は、確かに論拠が不確かな主張がなされているように見える。しかし、円了の哲学の意義は、論理的な精緻さにあるのではなく、実践哲学と区別される純正哲学を推進し、哲学の新たな局面を切り開いたところにある。さらに円了は、純正哲学を拡張し、老子、荘子、道元や親鸞といった人たちを哲学者として扱った最初の一人となったのである。  特別講演の後、総会を挟んで、東洋大学国際哲学研究センター長でもある村上勝三理事の閉会の挨拶が行われた。改めて参加者に感謝の意が伝えられるとともに、グローバリゼーションに立ち向かう国際哲学研究センターの活動の意義が述べられた。

国際井上円了学会第2回学術大会写真08悪天候の中、50名近い参加者に恵まれ、また日本語と英語による熱心な討議が行われ、非常に充実した学術大会となった。