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教員が語る大学院の魅力(ヒューマンデザイン専攻 森田明美 教授)

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児童福祉を研究することとは、人々の暮らしや社会福祉に対する「信頼」と「希望」を創造すること

森田先生

Q.教員としてご自身の専門分野を踏まえ、「研究者として研究」することの意味とは?

 児童福祉を研究することとは、人々の暮らしや社会福祉に対する「信頼」と「希望」を創造すること

 社会福祉学研究は「実践学」であり、その実践は社会福祉課題を抱える人々を支え、問題解決に向かう意欲とその方法を示すものでありたいと思います。その研究は、社会福祉問題を解きほぐし、その問題を当事者とともに解決をするための方法をさがし、組みあわせたり、不足するものを作りだしたりすることです。けれども、残念ながら、現代日本における社会福祉学は、社会福祉問題を抱える当事者にあてにされなくなっているし、また問題を解決するために支援をする行政や実践現場からあてにされなくなっています。社会福祉研究とその実践の創造は挑戦的であり、一人ひとりの幸せを具体化できる素晴らしいものです。とりわけ児童福祉の分野の研究は子ども自身がこれまでは当事者として尊重されてこなかったということもあるため、こうした新しい視点の取り組みが重要です。

 

Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯をご紹介ください。

 保育施設での死亡事故で子どもを失った当事者との出会いが研究者となったきっかけです

 女性が働き続けるための保育実践研究を始めた学部生のころ、保育施設で子どもを亡くした保護者の方々との出会いがありました。人間として当たり前のことであるはずの「社会の一員として働きたい」ということの実現のために、子どもの命を引き換えにしなければならないような社会は変えなければいけないと思い、地域で子育てする人たちや子どものために良い保育施設がつくられる政策や実践を作るために保育研究を始めました。1980年には「劣悪なベビーホテル」問題が社会問題、国会でも取り上げられるまでになり、私が当事者の人たちと一緒に行った調査をもとに、マスコミが動き、国も動き、乳児院や児童養護施設を利用した新しい地域での子育てを支援する保育の在り方が探られるようになりました。

 

Q.教員としてご自身のご専門分野について、現在までにどんなテーマを研究されているのかご紹介ください

 子どもの権利を基盤にした児童福祉政策研究です

 その後、自分でも妊娠出産をしながら、日米の保育・子育て支援の比較研究を進め、共働き家庭、母子家庭、父子家庭と子育てと保育制度の違いを国際比較していく実態調査の魅力にとりこまれました。妊娠中には自分の子どもを預けたいと言って、見学では断られる日本のベビーホテルやアメリカの保育施設を見て回りました。この国際比較調査は、大学院の先輩で後に帰国して日本の社会福祉とジェンダーに関する研究の第一人者となっていく杉本貴代栄(元金城学院大学教授)が当時シカゴ~デトロイトに在住し、その人脈でアメリカ調査が可能になったのです。1982年ごろから2000年ごろまでは毎年夏に20日間程度アメリカを訪問して様々な調査を実施しました。

 その過程で、日本の少子化が顕著になり、自治体で地域子育て支援計画を作る時代を迎え、1990年ごろから自治体での制度政策、計画づくりを手掛け、その後、その評価検証方法の開発等にかかわりました。これまで千葉県、東京都、埼玉県など約20自治体の計画づくりにかかわってきました。また同時にこのころから、子どもの権利条約の批准運動、子どもの権利の視点を具体化する児童福祉について考える機会が増え、21世紀に入るころから児童福祉と女性福祉、子育て支援の両方の問題を抱える10代親支援研究を始めることになります。この人たちの抱える問題を研究できるのは、私のような研究フィールドを持つ者しかできないと考えたのです。この問題と、2011年3月11日の東日本大震災後に始めた子ども支援研究は、ともに今もそしてこれからも私が研究をし続けなければならない課題と思っています。

 

Q.研究者として、つらかったことや、嬉しかったことは?

 うれしかった時は、1992年5月に第45回日本保育学会総会にて第29回日私幼賞(現:保育学会文献賞)受賞。(対象『日米の働く母親たちー子育て最前線レポート』ミネルヴァ書房)をいただいた時です

 この研究は、今でいう学際研究で、経済学、社会福祉学、社会学、ジェンダーなどの女性研究者が集まり実施したもので、保育政策研究者として参加した私は実施調査とまとめ、分析を担当し、一番若かったこともあり、事務局長としてかかわっていました。保育学会の会員としては私だけだった関係で、私が学会賞をいただきました。

 当時会長であった岡田正章明星大学教授が授与式の檀上で、「保育学会が初めて実証的な保育政策研究を評価することができたことが自分のことのようにうれしい」と言ってくださったときは、うれしくてボーっとして「ありがとうございます。がんばります」とだけ言ったことを覚えています。そのことがあって、保育関係者や自治体から保育研究や制度研究の場に呼んでいただけるようになりました。この時にできた実践現場や団体、行政などとの関係が、それ以降の私の研究パートナーとしての財産になっています。そうした意味で私の研究者としての一つの節目になりました。

 

Q.大学院で学ぶことの魅力とは?

 研究フィールドや研究アドバイス、仕事の紹介などとても盛んに行われています

 1975年に孝橋正一先生の指導をうけたくて、当時関東地域では2か所しかなかった大学院の一つ東洋大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻に入学しました。同級生は2人でした。当時も社会福祉学専攻は仕事をしながら大学院生をしている人が多く、私はアルバイト程度でしたので、授業時間以外は、日本女子大学でお世話になっていた一番ケ瀬康子先生に大学院でも副指導教授として指導していただいていたので、保育問題研究をするなら東京保育問題研究会で保育現場を学ばせてもらいなさいと言われ、多くの関連保育施設の見学をし、またその団体の会報の編集長もして歴史や政策を学びました。その時に出会った先生方は次々と課題や次のフィールドを紹介してくださり、今の私の人的な基盤がそこで作られたと言えます。大学院では、先輩後輩と年齢を問わずにそれぞれの研究を進めるために、可能な限り理解し、一緒に社会福祉問題解決のために力を合わせました。社会調査実習という科目があったのですが、その時は、1年以上かけて、サリドマイド被害児の実態調査を手伝いました。全国に広がる被害児がちょうど高校進学時期を迎えていたので、進学に関する配慮などの必要性を含めた家庭訪問調査をさせてもらいました。また東京保育問題研究会では保育政策部会で活動し、ある自治体で保育所に入所できなかった待機児の方々の訪問調査なども手伝いました。この時の調査経験は、その後の日米調査や10代親調査研究などに大きく影響しています。

 同窓生の絆はとても強いです。当時から、仕事や研究の紹介などをはじめ、○○さんはそろそろこんな仕事ができるかな?とかこんな活動をしておいたほうがいいかと、研究の場の紹介なども盛んに行われたのですが、それは今も東洋大学大学院の良き伝統として引きつがれています。

 

Q.大学院で学びを考えている受験生にメッセージお願いします。

 大学院での学びは、国内外で福祉社会を形成していくための礎を担う専門家を育てる場となる

 私の時代は、初めて結婚や子育てをする女性研究者が登場する時代でした。大学院での学びをした人がすべて、研究者になるわけではないと思います。私は、大学院を出て40年余り、要請された仕事や研究に可能なかぎり誠実に応える形で進めてきた結果、今、東洋大学教授となり、大学院で研究指導をさせていただいています。ゼミ生には留学生も多く、日本の社会福祉現場を知ることが必要な人も多くいます。研究のフィールドも必要です。そこで、これまで支えていただいた多くの現場、行政、研究者、最近では市民、NPO、当事者、企業の方々にも協力していただき、国内外の院生の幅広い研究ニーズに応えるようにしています。それは院生にとっても、またそうした人々を受け入れる人にとっても有意義な出会いとなります。

 研究的な視点をもつ実践者が多く登場すれば、社会問題の解決のためにもっと力を合わせることができると思います。

 そうした意味でも大学院で学ぶことは大きな意味を持つはずです。


プロフィール

氏名: 森田 明美 (もりた あけみ)

経歴: 現在、福祉社会デザイン研究科ヒューマンデザイン専攻 教授

※2018年4月より、東洋大学大学院社会福祉学研究科社会福祉学専攻 教授

1978年 東洋大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻修士課程修了後、

東洋大学児童相談室(現在:人間科学総合研究所 当時:相談室非常勤相談員)、非常勤講師を経て

1983年から清和女子短期大学勤務。

1994年度より、東洋大学社会学部助教授[1997年から教授、現在に至る]。

専門: 子どもの権利を基盤にした児童福祉学

著書: 共編著『子どもの権利条約から見た日本の子ども』 現代人文社

『逐条解説 子どもの権利条約』『 子どもの権利日韓共同研究』『子ども計画ハンドブック』『子ども条例ハンドブック』『子どもにやさしいまちづくり』 以上日本評論社

『日米の働く母親たち』『日米のシングルマザーたち』『日米のシングルファーザーたち』『よくわかる女性と福祉』『シングルマザーの暮らしと福祉政策‐日本・アメリカ・デンマーク・韓国の比較調査』 ミネルヴァ書房他 など

http://ris.toyo.ac.jp/profile/ja.01715a8be304878ef090a220942e4e9b.html

 


(掲載されている内容は2017年6月現在のものです)