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教員が語る大学院の魅力(ヒューマンデザイン専攻 鈴木崇之教授)

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現場で直面した困難を「研究」に編み上げる

鈴木崇之先生

Q.教員としてご自身の専門分野を踏まえ、「研究者として研究」することの意味とは?

「現場実践」と「実践者教育」に寄与する「研究」をめざして

私の専門は「子ども家庭福祉論」です。その中でも、児童相談所におけるソーシャルワークや入所型児童福祉施設におけるケアワークに関する研究が主たる専門分野です。日本の子ども家庭福祉は児童虐待のある家庭への支援と虐待を受けた子どもへの支援という困難な課題に直面してきました。他の社会問題同様、児童虐待問題に関しても欧米は先進国ですが、日本には独特の文化がありますので、欧米のものをそのまま輸入して良しとする訳にはいかないことも沢山あります。現場職員が直面する支援上の課題について、国内外を問わず研究をして学び、それを自分の実践力の向上に役立てる。さらには、学んだ知識や技術を周囲の仲間と共有したり、後輩の実践者の教育に活かす。そういったポジティヴな循環の基礎となるのが「研究」だと感じています。

Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯をご紹介ください。

実親から熱湯を浴びせられ重度のやけどを負った子どもとの出会い

私が「子ども家庭福祉」の道に入ったきっかけは、大学2年生の頃にはじめた児童相談所一時保護所の夜間指導員のアルバイト、そしてそこでの子ども達との出会いです。アルバイトを始めてちょうど一ヶ月くらいが経過した頃だったでしょうか、ほぼ全身に重度のやけどを負った子どもが保護されてきました。「自分の子どもをここまで虐待する親がいるのか」と震撼したことを今でも覚えています。しかし、一時保護所でその子と暮らしはじめてみると、単純に「かわいそう」というだけでは済まない、その子自身の問題性にも直面することとなりました。まだ学部学生だった私は、その子から様々な「試し行動」を受け、決してうまくコミュニケーションがとれたとは言えませんでした。当時はまだ、「愛着障がい」や「生活治療」の研究が少ない状態でしたので、一時保護所の夜間指導員仲間と一緒に、こういった子どもを理解する方法や、自分たちの実践力を高めるために参考となる資料を探しまわりました。大学で先生から教わるだけでなく、自分たちで困難状況に向き合い、それを乗り越える方法を探した経験が、研究者になるきっかけになったのだと思います。

Q.教員としてご自身のご専門分野について、現在までにどんなテーマを研究されているのかご紹介ください。

現場で直面した困難を「研究」に編み上げる

私は元々あまり頭が良いほうではありませんし、自分が体験した範囲の中でしか問題意識を持つことができないところがあります。しかし、そういったネガティヴな特徴がある意味で研究者としての私のストロング・ポイントになったと言えるかもしれません。大学・大学院時代に関わった児童相談所一時保護所に関しては、未だに充分保障されているとは言えない「子どもの学習権」について大学院生時代にまとめました。内容的には院生の習作というレベルの論文ではありましたが、このテーマに関しては現場報告がいくつか出されていただけという時代背景の中で、先行研究のレビューや先進事例の比較検討という形で一時保護所の学習権の現状と課題をまとめた先駆的な業績という評価も受けました。

その後私は、一時保護所から入所型児童福祉施設に措置された子どもの自立支援にも関心を持つようになり、児童自立支援施設における義務教育終了児の自立支援実践について研究を行いました。この時の研究は加筆修正を加えた上で、その後厚生労働省が発行した『児童自立支援施設運営ハンドブック』に収められました。

Q.研究者として、つらかったことや、嬉しかったことは?

現場の実践者からの期待を「研究」へのモチベーションに変える

今でこそ、被虐待児支援の研究や一時保護所の研究などは、誰もがその必要性を否定しない時代となりました。しかし、私が院生の頃は「一時保護所での実践など研究の対象にならない」と言う大御所の研究者がいたり、また大学院生と非常勤指導員をかけもちしていたことから立場の中途半端さゆえに理解を得られないということもありました。そのような中でも、「現場に片足をおきながら、現場に成果を還元してくれる研究者が必要なんだ」という声に励まされてきました。そういった声に支えられることによって、なんとか研究者生活を続けてこられた気がします。

Q.大学院で学ぶことの魅力とは?

自分で問題を発見し、手探りで答えを探す

私は資格養成系の学部の出身ではありませんが、資格が社会に出るための必須アイテムとなった現代、学部学生は自分の学部で得ることができる資格の習得にばかり追われているように感じます。大学院での研究は、専攻内容によっては資格に直結することもありますが、大半はそうでないことが多いと思われます。しかし、だからこそ、資格のための「実習」とは異なる形で現場に入り、また自由な発想で問題に向き合い、研究を行うことができるのではないかと思います。

Q.大学院で学びを考えている受験生にメッセージを一言。

みなさんの現場での困難状況を乗り越えるため、またはそれを乗り越えた経験をまとめるために、ぜひ本学の大学院をご活用ください!

従来の「量的研究」や「理論的研究」ももちろん重要です。しかし近年は、「質的研究法」や「プログラム評価法」等の研究方法論が進歩してきており、「子ども支援」の実践研究への応用も進んでいます。この機会に是非、みなさんの現場での困難状況を乗り越えるため、またはそれを乗り越えた経験をまとめるために、本学の大学院に集っていただけたらと思います。みなさんの研究の成果を自らの実践改善や同じ悩みを持つ人々に還元するために、微力ではありますが私もお手伝いできればと思っております。


プロフィール

氏名: 鈴木 崇之(すずき たかゆき)

経歴: 現在、東洋大学大学院福祉社会デザイン研究科ヒューマンデザイン専攻 教授

      1995年 明治学院大学文学部心理学科卒業。児童相談所一時保護所、児童自立支援施設にて

      非常勤指導員として勤務しながら、明治学院大学大学院社会学研究科博士前期課程に進学。

      2000年 明治学院大学大学院社会学・社会福祉学研究科博士後期課程を単位取得満期退学。

      その後、武庫川女子大学助手、沖縄大学実習助手、頌栄短期大学専任講師、会津大学短期

      大学部専任講師

      2012年より、東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科

専門: 子ども家庭福祉学、家庭支援論 など

著書: 単著『児童虐待時代の社会的養護』(学文社・2015年) など


(掲載されている内容は2016年5月現在のものです)