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教員が語る大学院の魅力(国際地域学専攻 岡本郁子教授)

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 フィールドワークを通じた発見と人との出会い

 岡本郁子先生


Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯をご紹介ください。

さまざまな現象や問題の裏にあるメカニズムを理解し、そこから処方箋を導きだす

途上国が抱える経済・社会問題は多様です。それらの問題を解決するためには、目に見える現象を正確に把握するのはもちろんのこと、「なぜ」そうなっているのかという理由やその背後にあるメカニズムがわからなければ適切な解決策をみつけることはできません。研究とはそうした「なぜ」を解明していくことであり、常識とされる解釈や通念の打破を目指すことにもなります。そうした知的発見を通して、現実の問題への処方箋を考察すること、そしてそれを広く社会に共有することが必要だと考えています。

Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯をご紹介ください。

国際協力の実践と迷いながらのスタート

父の仕事の関係で中学時代を発展途上国で過ごした際の経験から、学部時代から途上国が抱える問題に関心を持ち、将来は国際協力の分野での職につきたいと考えていました。学部卒業後、いったんは異分野の民間企業に就職したもののその気持ちが変わらなかったため、早期に退職を決断し、アメリカの大学院(修士課程)への進学を決めました。大学院では途上国の開発問題、食料問題を中心に学ぶ専攻を選びました。大学院修了時点で、援助機関等に就職するか、もしくは研究機関に就職するという選択肢の間で悩みましたが、実践に向かう前により深く農業・農村開発問題を分析し、理解する能力をつける必要性を感じ、研究者の道に進みました。

Q.教員としてご自身のご専門分野について、現在までにどんなテーマを研究されているのかご紹介ください。

途上国農村部の経済開発と貧困削減、特にミャンマー農村経済に関する実証研究

ミャンマーは、独特の社会主義政権、その後軍事政権下に長年置かれ、他の東南アジア諸国の多くが飛躍的な成長を遂げてきたのとは対照的に経済は停滞してきました。とりわけ人口の7割が居住する農村部では、不十分な生活インフラのなかで貧困に苦しむ人が多いのが現状です。そこで、私の研究関心は、まず政府の経済政策が農村部の人々の経済生活にどのような影響を及ぼしてきたのか、またはいるのかというところに向かいました。同じ政策でも農村の社会階層によってその影響の方向性や程度は当然異なります。そうしたインパクトを実証的に検証していくことをこれまで続けてきました。具体的な研究課題としては、流通自由化政策の変化が小農や小規模漁民にもたらした影響、農村金融市場の実態とその貧困削減への影響、農村間労働移動の実態などです。ここ数年は、経済学的な分析から少し離れ、農村の社会構造の特色や村を中心とする住民組織化や共同行動などを研究しています。この研究は、たとえば住民参加型の開発プロジェクトを実施する際にその受け皿となる社会組織がどう動くのか、なにを得手とするのか、あるいは不得手とするのかの理解がそれに関わる人々に共有されているのといないのでは、そのプロジェクトの成否が大きく変わってくるという考えに基づいています。

Q.研究者として、つらかったことや、嬉しかったこと?

フィールドワークを通じた発見と人との出会い

長年軍事政権下にあったミャンマーは、そもそも研究の材料となるデータや情報へのアクセスが簡単ではありませんでした。そのため、農村部の経済の実態をきちんと把握するためには、自分の足でデータを集めるしかありません(むろん統計等がそろっている国の場合でもフィールドワークは重要です。ミャンマーの問題は、スタート地点で欲しい情報も満足にないケースが多いというところが問題でした)。また、フィールドワークを行う際にも誰でもいつでも農村部に入っていけるわけではありませんでした。どんな短期の調査でも毎回当局からの許可(時には閣議レベルの許可を含む)が必要であり、そのために時には3-4ヶ月前に調査許可願いを出さねばならないという時期もありました。また、常に入国そして調査許可が得られる保証はなかったため、もしかすると今回の調査が最後かもしれないといつも思いながら調査をしていました。

このようにフィールドワークを始めるまでの気苦労があったというのは事実ですが、現地に入ることができるとそういった苦労は一気にどこかにう飛んでいきます。そこでは知りたい情報を集めるだけでなく、そこでの人々との出会い、直接その場に身をおくことによって、多くのことを学び、また新たな発見をすることができました。いつも現場で学ばせてもらっているような感覚です。そこにフィールドワークの醍醐味があるように思っています。

Q.大学院で学ぶことの魅力とは?

問題を自分で設定し、深く掘り下げる

大学院では、自分で学術的な問いをもとにテーマを決め、そしてそれをとことん突き詰めて掘り下げて探求することが可能です。むろん自分の立てた問いへの答えをだすためには、さまざまなことを身につける必要があります。それは既存の研究から何を読み取るのか、分析に必要な情報をどうやって集めるのか、そしてそれを論理的かつ説得的に文章としてまとめるのにはどうしたらよいか。学部での学びでは体系的な知識の取得に重きがおかれますが、大学院ではそれをスタート地点として、分析力、洞察力を身につけながら、新たな知的発見を目指すことになります。

Q.大学院で学びを考えている受験生にメッセージを一言。

現場に立脚しながら、知の探求を志そう

現代社会は文字通り情報があふれています。今やわからないことがあれば、インターネット上ですぐに調べることができ、ものごとを理解したと考えてしまうことも多いかもしれません。しかし、現実の社会で起きている様々なことを理解することはそれほど容易なことではありません。見る角度やアプローチによってずいぶん違った像が浮かび上がるはずです。国際地域学専攻は、研究対象(フィールド)を大事にしながら、もっとも適切な問題へのアプローチを身につけ、実践的な問題解決の能力を培う環境を提供しています。そうしたなかで、新たな発見、知への探求を目指すところに大学院での学びの意義があると考えます。


プロフィール

氏名: 岡本 郁子 (おかもと いくこ)

経歴: 現在、東洋大学大学院国際地域学研究科国際地域学専攻 教授

    1992年 上智大学外国語学部卒業、スタンフォード大学食料研究所修士課程修了後、

    日本貿易振興機構アジア経済研究所勤務。京都大学博士(地域研究)。

    2014年より、東洋大学国際地域学部。

専門: 開発経済学、ミャンマー地域研究

著書: Economic Disparity in Rural Myanmar: Transformation under Market Liberalization(2008)など


(掲載されている内容は2016年5月現在のものです)