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教員が語る大学院の魅力(哲学専攻 相楽勉教授)

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哲学研究は、それ自体が身を以ての「哲学」(知恵の愛求)です

相楽勉先生


Q.教員としてご自身の専門分野を踏まえ、「研究者として研究」することの意味とは?

哲学研究は、それ自体が身を以ての「哲学」(知恵の愛求)です!

哲学の研究に際しては、その研究者であること自体が常に問われるべきことです。たしかに私たち研究者は特定の哲学者の思索の跡をたどり、あるいは哲学上の難問に対して納得できる答えを求めますが、同時にそれがなぜ今ここで問われねばならないのかということも研究者自身に問われています。社会的要請を考慮するだけではなく、問いを発する自己自身と向き合うことが必要です。哲学研究者は「哲学者」ではないと揶揄されることがありますが、やはり哲学を問うことは、善き生のための知恵(ソフィア)を大事にすること、そういう知恵を求め続けることです。古代ギリシア以来2500年以上にわたって人々に受け継がれてきたフィロソフィアの意味と、それを自ら行うことの意義をいつも考えて下さい。

Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯をご紹介ください。

人間にとって「言葉」とは何か?

高校生のころ興味を以て読んでいたのは主に日本や欧米の近代小説や詩、音楽、また「徒然草」など古典文学でしたが、それらを通じて、またある友人を通じて、世界の在り方や人間存在の意義を真っ向から問う「哲学」という学問のことを耳にしました。といっても直接哲学の本を読んだことはなく、大学での哲学の授業が哲学との最初のコンタクトです。また当時教授学生交歓会というのが開催され、そこである先生から現代人の「故郷喪失」状態を「不安」や「退屈」といった気分の分析を通して説明され大変衝撃を受けました。その問題こそ自分の研究対象となるハイデガーの哲学に由来するものでした。研究者になろうと初めから考えていたのではないのですが、卒業論文の時に見出した「コトバと存在」という問題に対して納得できる答が見いだせなかったことが、大学院に進学してさらに学ぶことや、ドイツに留学することに繋がって行きました。ドイツ語を学び、ドイツ語圏で生活することを通じて、日本語や日本文化のことを考える機会も増えました。人間にとって「言葉」とは何かという問いが、いつも心の内にはありました。

Q.教員としてご自身のご専門分野について、現在までにどんなテーマを研究されているのかご紹介ください。

20世紀に人類に課せられた哲学問題の吟味と、日本における「哲学」の始まりという問題

20世紀ドイツの哲学者マルティン・ハイデガーの「言葉」を巡る思索の意味を大学院時代から考えています。最初は主著『存在と時間』における言語の存在論的介錯や、彼のヘルダーリンやトラークルなどの詩人の解釈に単純に惹かれていたのですが、研究するにつれそれらの思索が20世紀に人類が経験した大きな変動に応じたものであることがわかってきました。そこからハイデガーと同時代の日本における哲学にも大きな関心を持つようになりました。西田幾多郎をハイデガーの同時代人として見直すところから日本哲学の研究も始め、現在では日本における「哲学」の始まりという場面にも関心を以て研究を進めています。それは西洋思想の受容という日本における何回目かのグローバル化の時代の問題に関連し、そこにおける翻訳と思索の跡をたどることは、これからの日本の文化の可能性を考える上で大きな示唆を与えてくれると思います。現在は「自然」という言葉がnatureの翻訳語としても定着して行った明治20年代から30年代の期の思想と文化の展開過程に特に興味を持っており、専門の垣根を超えた研究プロジェクトを立ち上げようと試行錯誤中です。

Q.研究者として、つらかったことや、嬉しかったことは?

研究自体につらさはない

博士前期課程に入学した当時は、原典テキストを読む語学力も不十分で、来る日も来る日も英語、ドイツ語、ラテン語などとの格闘でした。あまりに語学漬けで、哲学自体の研究が進まないと焦ったこともありましたが、ありがたかったのは、先輩方がそういう悩みに耳を傾けて下さったことです。博士後期課程の先輩方の読書会に参加したことも、この時期を乗り越える大きな助けになりました。修士論文に関しては、主査の先生にも副査の先生にも何度もご報告したり質問したりする機会があり、最後は主査の先生のお宅にまで呼ばれて長時間にわたるご指導とご助言をいただきました。学会のお手伝いというのも大きな経験でした。それを通じて、多くの先生方や他大学院の院生たちとも知り合いになりましたし、学外の研究会に誘われることもありました。ドイツへの留学を考えたのは、デンマークに留学中の先輩をお訪ねした経験が大きいです。この時は、一か月以上ヨーロッパ各国をも無計画に旅行しました。文化の違いに戸惑うこともたくさんありましたが、片言であれ言葉でコミュニケーションすることが相互理解につながるという感じを持ちましたし、これらの文化をもっと理解したいと思いました。

Q.大学院で学ぶことの魅力とは?

教員や研究者を目指す仲間ととことん話ができること!

哲学とはなんといっても徹底的に自分のもっている知識を吟味することですから、少人数あるいは教員と一対一で長い時間の討論と対話のできる大学院こそが最高の環境です。また大学院に所属することが学会活動への入り口ともなり、そこから国内国外の研究者と交流する機会もたくさん得られます。

Q.大学院で学びを考えている受験生にメッセージを一言。

「哲学」の学びはやはり教員との出会いです。自分の本当の問いに出会うためにも、大学院の扉を叩いてほしいと思います。


プロフィール

氏名: 相楽 勉(さがら つとむ)

経歴: 現在、東洋大学大学院文学研究科哲学専攻 教授

    1982年 早稲田大学第一文学部卒業、

    1989年 東洋大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。

    1993年より東洋大学文学部専任講師。

    2008年より同教授。

専門: 哲学、比較思想

著書: 『ハイデガー『哲学への寄与』解読』(2006年、共著)など


(掲載されている内容は2016年5月現在のものです)