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経済学研究科経済学専攻の公害対策論

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講義担当者 : 神山 宣彦客員教授神山宣彦客員教授

プロフィール

有害粉じん(アスベストやシリカ等)の計測法や健康影響の研究に30年間従事(現 労働安全衛生総合研究所にて)、平成17年(2005年)4月より東洋大学経済学部教授を勤め、平成23年度から大学院経済学研究科客員教授。専門は労働衛生工学(作業環境計測)、粘土鉱物学など。東洋大学では統計学、エネルギーの科学、地球の科学等の一般教育を担当した。公職として中央環境審議会臨時委員、厚労省労働政策審議会臨時委員、経産省日本工業標準調査会委員、厚労省労災補償委員、環境省石綿救済認定委員、日本労働衛生工学会会長、日本作業環境測定協会常務理事、日本溶接協会安全衛生環境委員長などを務めている。

メッセージ

私は、アスベストやシリカ粉じんなどの有害な粉じんの計測法や健康影響などの労働衛生研究をしてきました。私が労働衛生研究を始めた1974年頃は、まだ労働安全衛生法もなく、職業病も多々発生していた時でした。その頃、欧米ではアスベストという繊維状鉱物を吸入した労働者に肺がんや中皮腫(胸腔や腹腔のがん)が多発していました。わが国では鉱山労働者のじん肺(けい肺)は良く知られていましたが、アスベストが肺がんの原因物質という認識はあまりない時代でした。そのような時期に私はアスベスト研究を始めました。アスベストの作業環境や大気中の測定方法、肺がんや中皮腫患者の肺内アスベストの測定方法、あるいは原材料中のアスベスト測定方法など、広範囲に研究しました。同時にアスベストの生体影響の研究も積極的に進めました。

わが国は、1955年頃から70年頃までの戦後の復興期から高度経済成長期にひどい公害問題を経験しました。イタイイタイ病、水俣病、四日市ぜんそく、新潟水俣病、カネミ油症、自動車公害、光化学スモッグ公害、など。これらの疾病は有害物質にばく露後、比較的早く病状が出るため、ばく露からあまり時差なく疾病が認識されました。しかし、最近認識されたアスベスト公害は、水俣病などの公害と同じ頃の環境汚染が原因ですが、アスベストのばく露から肺がんや中皮腫の発症までの潜伏期間が数十年と長いため、最近判明したわけです。労働者だけの疾病と考えられていたアスベストが、公害の原因でもあったことが分かったのです。

経済学研究科環境学研究コースでは、「公害対策論」を担当しています。20世紀にわが国は世界的にも稀な急速な工業化と経済発展を遂げました。一方、その見返りに種々の公害問題や環境問題も起こしてしまいました。「公害対策論」では、イタイイタイ病、水俣病、四日市ぜんそく、アスベスト汚染などを取り上げ、工業化に伴う労働環境管理と一般環境の管理の面から、それらの問題点を検証します。そして、労働者の健康管理にはどういった対策が必要か、環境対策と経済成長は両立させられるか、わが国の公害経験は今後工業化を進める発展途上国に如何に生かしたいいのか、などを考えてゆきます。

この講義では、具体的な公害問題を環境、健康影響、環境対策といった面から講義します。院生は、そのプレゼン内容を教師や院生間で討論しながら理解を深めてゆきます。また、できるだけ外国の例も知るように努めます。こうした公害問題と対策の理解は、将来、企業や自治体、あるいは発展途上国援助などに携わった時にきっと生かせると思います。皆さんの積極的な参加を望んでいます。

シラバス

公害対策論、公害対策論研究指導
~わが国の公害経験とその克服~

講義の目的・内容・到達目標

わが国は、戦後の復興期から高度経済成長期にひどい公害を経験した。イタイイタイ病、水俣病、四日市ぜんそく、新潟水俣病、自動車公害、などである。その後、対策が進み公害を忘れた最近になってアスベスト公害が発覚した。1980年代、私は数少ないアスベスト研究仲間と「アスベストが分ると世界が分る」と語り合った。これは決して奢った意味ではなく、「アスベストは工業化と環境汚染・公害発生、法規制や国民意識の時間差、そして政治・経済・文化などに深く関係した物質であることから、従来の公害問題や社会の性向を理解できる」という意味であった。
本講義では,このアスベスト公害の経験を切り口に、過去の公害問題について原因・影響・対策の面から経時的に理解し、どのような対策がとられたか、現在工業化が進行中の国々にどう支援できるのか、また、公害経験をわが国の将来にどのように生かすべきかなどを検討する。
本講義の目的と到達目標は、公害問題の事例を対象にしながら、公害や環境の問題発生と技術対策や経済対策の関係、人々の意識・法規制のあり方などを理解し、公害問題への総合的な考え方を身につけることである。

講義のスケジュール

代表的な公害問題を取り上げ、各公害問題についてまず講義して、その内容に関して討論して理解を深める。

第1回

はじめに :

日本の公害経験、工業化と公害問題、労働環境問題から公害問題及び環境問題への変遷、環境クズネッツ曲線
第2回演習
第3回戦後の公害経験
第4回戦後の公害行政と産業界の対応
第5回演習
第6回

公害問題から環境問題へ :

環境庁の設置と公害諸法制定の経緯、法のシステム、公害国会、公害対策基本法、環境基準と排出基準、環境基本法
第7回演習
第8回

労働環境対策と公害・環境対策との関連 :

日本の労災・職業病の歴史、中国の例、公害・環境問題との関係
第9回

鉱山公害の発生と対策 :

足尾銅山のよろけと鉱毒・環境問題、土呂久鉱山の亜ヒ酸焼きと環境破壊
第10回演習
第11回

カドミウム汚染:イタイイタイ病

阿賀野川水域のカドミウム汚染とその健康影響の解明
第12回

カドミウム汚染:イタイイタイ病(2)

イタイイタイ病の広がり、対策の経緯
第13回演習
第14回

有機水銀汚染:水俣病

有機水銀の健康影響とその問題発覚まで、被害の広がり
第15回

有機水銀汚染:水俣病(2)

水俣病の経験から学ぶもの
第16回演習
第17回

湾岸コンビナートの建設と大気汚染 :

四日市ぜんそく、二酸化硫黄による大気汚染、全国的な広がり
第18回二酸化硫黄等の大気汚染対策技術
第19回経済的に見た日本の大気汚染対策の評価
第20回演習
第21回奇跡の鉱物から時限爆弾へ:アスベストの健康影響
第22回公害としてのアスベスト
第23回

アスベスト対策 :

アスベスト救済法、アスベストから代替繊維の開発、代替繊維の安全性は、ナノ粒子問題、行政対応の現状、発展途上国のアスベスト
第24回演習
第25回カネミ油症事件、PCB・ダイオキシン問題
第26回諸外国の公害問題
第27回演習
第28回まとめと総合討論 : 最終レポートの作成

指導方法

講義はPower Point と配布資料を用いて講義形式で行う。各テーマの講義の後、演習として講義に関連した討論と考察を行い、理解を深めるとともに問題点や疑問点も明らかにする。疑問点や問題点は調査課題とすることもある。

成績評価の方法

講義への出席および期末に提出を求める最終レポートなどで評価する。講義後の演習においても積極的な発言あるいは調査結果の発表を期待しており、それらも評価対象とする。

テキスト

講義ごとに配布プリントを用意し、それに基づいて行う。

参考書

講義時に次回テーマに関係する参考書を紹介する。