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教員が語る大学院の魅力(経済学専攻 川瀬晃弘准教授)

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世の中を俯瞰する視点を手に入れてキャリアにプラスを

川瀬晃弘先生


Q.教員としてご自身の専門分野を踏まえ、「研究者として研究」することの意味とは?

研究とは「アカデミズムの追求」と「現実社会への貢献」

経済学は、人々がトレードオフに直面することやインセンティブに反応することを前提として、人間の行動や選択について体系的に捉えようとする学問です。経済学はマーケットを相手にするものと思われがちですが、実はそうではない分野も少なくありません。市場だけではうまくいかない部分に、政府がどう介入していくのか、また介入した効果がどうなのかを、私は研究しています。社会保障を例に挙げても、年金・医療・介護・保育など解決すべき問題はたくさんありますが、使える予算や資源には限りがあります。すべての問題を一挙に解決できるだけの資源が十分にあれば政策の選択にあたって困ることはないわけですが、私たちが使える資源は稀少なためトレードオフに直面することになります。つまり、高齢者の年金問題を解決するためにお金を使えば、子育て世代の保育問題を解決するためには使えません。何かを選択するということは何かを諦めることです。すべてを同時に解決することは出来ないので、何を選択し何を諦めるのかを決めなければいけないのです。しかし、現実社会では一つを選択し他を完全に諦めるといった極端なことは出来ません。その中でも、両者をバランスよく追求することが必要です。研究者としても、優れた学術論文を書くことと現実社会に貢献するという二つがトレードオフに直面することもあります。それでも、両方をバランスよく追求していくことが研究者が果たすべき役割だと私は考えています。

Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯をご紹介ください。

先生方との出会いが研究者を志したきっかけ

学部時代、ゼミを選ぶときにある雑誌に掲載されていた黒川和美先生の記事を読み、ゼミ見学に行ったのです。先生の話が面白くて、その場で黒川ゼミに入ることを決めました。そこで学んだのが公共経済学や公共選択論と呼ばれる分野だったのです。政治家や官僚が何を選択して、結果としてどうなったのかを、黒川先生は研究しておられました。先生は国の審議会に出席したりしていましたから、毎週、永田町や霞ヶ関で何が起きているのかを聞けたのです。それも刺激的でした。私は財政の実証研究を勉強したかったので、当時、財政学を専門とする教員が4人もいた大阪大学の大学院に入学し、跡田直澄先生と齊藤愼先生に師事しました。後期課程に進学する頃には、指導教授の仕事のお手伝いをする中で、政策立案過程を垣間見る機会にも恵まれました。そのとき感じたのは、アカデミックな研究と実際の政策の「距離」でした。政策を立案するとき、こうした研究成果がでているから、こんな政策が望ましいのではないかといった提案が、なかなか出てこないのです。もちろん実際に選ばれる政策と研究は別物だとは思います。ただ、研究成果を基に議論することが大切ではないかと考えています。

Q.教員としてご自身のご専門分野について、現在までにどんなテーマを研究されているのかご紹介ください。

公共部門の役割について考える

私の研究分野は財政学・公共経済学です。経済活動に対して公共部門は、いつ介入すべきか、どのように介入したらよいか、介入によって得られる効果は何か、なぜそのような方法で介入するのか、といったことが財政学・公共経済学の主要なテーマとなります。その中でも、私の主な研究のトピックは「外部性」についてです。外部性とは、ある経済主体の意思決定が市場を介さずに他の経済主体に影響を及ぼすことで、環境問題などは外部性の典型的なテーマです。経済学では非常に幅広い分野を扱えるので、こうした外部性にかかわることを横断的に研究しています。最近では、健康や環境に関する問題に着目して研究を行っています。たとえば、予防接種のような健康予防が医療受診や健康状態に与える影響や、土壌汚染のような環境問題が存在することが都市再生にどのような影響を与えるのかについてです。こうした研究を通じて、公共部門が果たすべき役割について考えています。

Q.研究者として、つらかったことや、嬉しかったこと?

勉強と息抜きのバランスを取りながら研究者としての自覚を育む

前期課程では、1年目にミクロ経済学・マクロ経済学・計量経済学といったコア科目が学部とはまったく異なる水準で提供されるため、非常に難しくて授業についていくのが大変でした。しかも、2年目には講義と並行して修士論文を仕上げなければならないので、とてもハードな2年間でした。後期課程では、講義に出席して勉強することよりも自身で研究を遂行することが中心となり、自分で研究テーマを設定し、関連する先行研究を読み、データを収集して分析するなど、自分の研究のオリジナリティや貢献を追求することが中心となりました。こうした中では、投稿論文が不採用になったり、それ以前に自分が満足できる論文が書きあがらなかったりしたことが多々ありました。それでも自分の好きなことに没頭でき、とても充実した大学院生活でした。また、ゼミの後には先生を囲んで懇親会になるのが恒例で、食事をご馳走になったりカラオケに行ってストレスを発散したりすることが多かったです。貧しい院生にとっては週一回の貴重な栄養摂取の機会であったとともに、授業以外の機会にも先生や先輩たちからお話を聞けたのは、研究者としての自覚を促す上で非常に貴重な機会だったと思います。

Q.大学院で学ぶことの魅力とは?川瀬先生

自由に考えることのできる時間が大学院にはある

大学院で経済学を学ぶことは、社会の様々な事象の中から問題を探し出し、そのことに関して徹底して考え抜くことです。それができる時間があるというのが大学院で学ぶ魅力ではないでしょうか。Research Questionを設定する、そのことが大切です。学部生のときには一方的に授業を受けることの方が多かったと思いますが、大学院では自身で問題点を発見し、その問題を解決する研究に主体的に取り組む必要があります。そのことが、研究者や実務家として独り立ちすることにつながります。大学院では自由にかつ徹底的に考えてください。そのための時間が大学院にはあります。

Q.大学院で学びを考えている受験生にメッセージを一言。

世の中を俯瞰する視点を手に入れてキャリアにプラスを

大学院修了後の進路は研究者になることだけではありません。日本では、まだまだ政治家や官僚の中に経済学の学位をもった人が少ないため、政策の立案・実行にあたっても残念ながら経済学的な知見が浸透していません。学問の世界で新たな価値を追求していくことも大切ですが、研究成果を社会に還元していくことも大切です。大学院進学が自分のライフコースにどのようにプラスになるのかを考え、大学院修了後の進路までイメージした上で受験されることをお薦めします。


プロフィール

川瀬晃弘先生氏名: 川瀬 晃弘(かわせ あきひろ)

経歴: 現在、東洋大学大学院経済学研究科経済学専攻 准教授

1999年法政大学経済学部卒業、2005年大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学、大阪大学博士(経済学)、法政大学大学院エイジング総合研究所研究員を経て、2007年より東洋大学経済学部。

専門: 財政学・公共経済学


(掲載されている内容は2016年5月現在のものです)