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大学院でのPPP研究から事業展開へ「フィリピン小水力発電事業」

大学院でのPPP研究から事業展開へ「フィリピン小水力発電事業」

2013年10月21日更新

大学院でのPPP研究から事業展開へ「フィリピン小水力発電事業」

東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻がミンダナオ島ブトゥアン市(フィリピン共和国)で行ったPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ/公民連携)に関する調査がきっかけとなり、この調査に参加した加藤聡さん(大学院経済学研究科公民連携専攻修了)の携わる小水力発電所の開発プロジェクトが始動しました。

サイト大学院経済学研究科公民連携専攻

2012年5月、ミンダナオ島のワワ川にて現地視察に訪れた
加藤聡さん。勤務先の長大では、事業推進本部リスク管理部
部長。2013年8月からは海外事業本部マニラ事務所長も兼
務しています

PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)とは、公民連携や官民連携と訳されます。政府と民間企業、NPOが連携し、役割を分担することで『豊かな公共』と『小さな政府』を実現することです。

加藤聡さん(大学院経済学研究科公民連携専攻修了)は、大学を卒業後に出版社勤務を経て、ビジネススクール修了(経営学修士)を機に、世界を舞台にインフラ投資ビジネスを展開する外資系投資銀行に勤務した後、交通、土木、都市整備などを手掛ける総合建設コンサルタント会社の長大に転職しました。

投資銀行で携わったのも、公共サービスの提供を民間主導で行うPPP事業でした。

「新規事業開発を期待されて転職しました。それまでの投資銀行での業務は、金融面からのアプローチだけでしたので、PPPの全体的な部分をバランスよく理解できておらず、自分の中で知識に偏りがあると感じていました。PPPをきちんと幅広く体系的に学びたいという思いが強くなり、東洋大学大学院に社会人入学を決意しました」

東洋大学では、官と民を結び付けるキーパーソンを育成することを目指して2006年度に大学院経済学研究科に公民連携専攻を設けました。また、大手町のサテライトキャンパスにPPP研究センターを設置し、地域再生支援プログラムや公共施設マネジメントなど、多くの研究成果を発信する日本唯一のPPP研究拠点として、これまでに100人を超える修了生を輩出しています。

2013年9月、修了証書を手にした加藤さん(前列下)

2013年度からは公民連携専攻内に3つのコースが創設され、加藤さんは、アジアなど新興国でのプロジェクト企画を学ぶ「グローバルPPPコース」を選択、論文もアジアPPP事業をカバーし(「Study on Expansion of Asian PPP Business by Japanese Engineering Consulting Firm - Possibility of Expanding Asian PPP Business by Utilizing the Business Track Records of Japanese PFI -」)、2013年9月に同コースを修了しました。

学びから事業の答えが見えた瞬間

現在取り組んでいるフィリピンでの小水力発電事業のきっかけとなった「PPPプロジェクト演習」は、ひとつの自治体を取り上げPPPを活用し、地域活性化や地域が抱える問題にPPP的アプローチを考えていきます。前半は公表資料などから机上スタディを中心に行い、直接現地にも足を運び、調査、視察、首長や議員、自治体職員へのヒアリングなどを実施します。その後、報告書にまとめ、最終的に現地でプレゼンテーションを行う科目です。

2011年9月、この演習では初めての海外となるミンダナオ島北アグサン州(フィリピン共和国)ブトゥアン市を対象に、PPPを活用した同市の経済発展、経済開発の可能性について調査を行いました。このPPP可能性調査では、幅広い分野について提案されましたが、電力の供給不足が経済発展を妨げている課題に対しての提案が、再生可能エネルギーでした。

2012年8月、「第21回ミンダナオ・ビジネス・
カンファレンス」でプレゼンテーションを行った
加藤さん。長大がミンダナオ島で投資を決定した
背景などを説明した上で、さらなる日本からの投
資を呼び込むために必要なポイントについての発
表を行った

そして、この調査がきかっけとなり、加藤さんの勤める長大が地元企業と交渉を進め、共同開発することに合意、小水力発電プロジェクトが始動したのです。

「当時、私が会社から与えられているミッションの1つは新規事業の開拓でした。ただ、大学院の講義から、実際のプロジェクトにつながることはあまり期待していませんでした。ところが、実際に現地を自分の目で見て、話を聞き、調べる機会を得たことで、事業の可能性が見えてきたのです。そこで、翌月会社の了解を取り付けたうえで、技術チームと共にブトゥアン市を再訪、現地調査を実施し、現地企業と共同事業として取り組む提案などを行いました。長大にとっては、国内外を通じて初めての小水力発電の開発事業への参画でした」

長大は現地企業と交渉を重ねて、ミンダナオ島のブトゥアン市を含む周辺エリアで、3つの小水力発電の共同開発に乗り出します。そのうちもっとも先行するアシガ川小水力発電事業では、長大も10%を出資して、現地法人アシガ・グリーン・エナジー・コーポレーションを立ち上げました。

「また長大は、2013年8月にマニラ事務所を開設しています。ミンダナオ島での小水力発電事業をより一層加速・拡大するとともに、フィリピンでの事業活動を本格化していくことが目的です。ブトゥアン市でのPPP可能性調査から約2年の間、調査が実際のプロジェクトに結びつき、マニラ事務所の開設につながったのは、まさに社会人大学院ならではの醍醐味なのかもしれません」

2013年9月に大学院修士課程を修了した加藤さんは、現在は長大の事業推進本部リスク管理部部長を務めながら、8月からは海外事業本部マニラ事務所長を兼務し、アシガ・グリーン・エナジー社の取締役も任されています。

2013年8月、長大のマニラ事務所開所式に向けて
準備を進める加藤さん

日本唯一のPPP研究拠点で仲間たちと切磋琢磨

「現在、国内と海外の滞在が半々の割合で業務をしています。大学院に入学した2011年当時は、これほど海外案件に関わることは予想もしていませんでした。結果的に、大学院での学習が知識、人脈を広げるだけでなく、実際の仕事につながり、仕事の幅を広げる機会になったことに感謝しています」

公民連携専攻の学生は1学年、約20名。加藤さんによると、約半数が民間企業から、残りは自治体・官公庁などに勤める社会人という構成で、その多くが国内外でのPPP事業に関わっています。

「競合企業に勤める人もいますが、学生という立場で、なかなか仕事上の付き合いでは話がしにくいことも、対等に話すことができます。ここで築いた人脈を仕事に生かすことができるのも大きな利点です」

国内唯一のPPP教育機関として、PPP研究センターをもつ本学は、2011年にフィリピン共和国ブトゥアン市、および同市を通じて、カラガ州立大学、ファザー・サトゥルニノ・ウリオス大学、セント・ジョゼフ工科大学の3校と、同国のセブ市に所在するサンホセリコルトス大学と学術交流協定を締結しました。

また、国連からPPP専門の教育機関としての認証を受け、アジアにおけるインフラ開発やものづくり産業の振興にPPPを活用するための研究や制度の標準化、教育を実施するためのアジアPPP研究所を設立するなど、フィリピンをはじめとしたアジア各地の国際的なプロジェクトに積極的に関わり、加藤さんのように世界を舞台に活躍するグローバル人材の育成に努めています。