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食糧問題の解決に向け、近未来環境に適合した収穫量の多いイネの新品種を開発

食糧問題の解決に向け、近未来環境に適合した収穫量の多いイネの新品種を開発

2013年9月24日更新

食糧問題の解決に向け、
近未来環境に適合した収穫量の多いイネの新品種を開発

生命科学部生命科学科の廣津直樹准教授は、地球の急速な人口増加を支えるため、バイオテクノロジーを活用したイネの品種改良に取り組んでいる。インドのイネ品種とコシヒカリを交配させる研究では、収穫量がコシヒカリに比べ約15%多いイネの開発に成功。さらに暑さにも強い可能性もあるという。

サイト生命科学部生命科学科

生命科学部生命科学科の廣津直樹准教授(左)

生命科学部生命科学科は「先端サイエンスの幅広い知識と技術を修得し、地球社会の諸問題に対応でき、かつ広い分野で活躍できる人材を育成する」ことを目的にしています。同学科で行われている研究内容は多岐にわたりますが、廣津直樹准教授はイネの品種改良に取り組んでいます。

急がれるイネの品種改良

廣津研究室
遺伝子の塩基配列や発現量、タンパク質の解析
など様々なバイオテクノロジーを活用して、
植物の環境応答メカニズムを調べたり、それを
生かしたイネ新品種の育成を目指しています

廣津准教授の研究室のテーマは大きく2つに分けられます。1つは収穫量の多い品種の開発、もう1つは環境変化に強い品種の開発です。

廣津准教授は「日本ではあまり実感することはありませんが、世界的にみると食糧不足は深刻です。今後も世界の人口は爆発的に増え続けると予想され、食糧の増産は必要不可欠です。特にアジア地域の主食であるイネの生産性を高めることが重要な課題になっています」と説明します。

ただし、イネの品種改良にはこれまで何十年もかかっていました。ゲノム情報とバイオテクノロジーを活用することで、この期間を5~10年に縮めることを廣津研究室は目指しています。

遺伝子組み換え技術は用いません。「素晴らしい品種を開発しても、消費者に受け入れられなければ意味がありません。このため、遺伝子組み換えではなく、あくまで交配により品種改良を進めています」と廣津准教授は強調します。

収穫量が15%多い新品種のイネを開発

収穫量が15%多い新品種のイネを開発

収穫量の多い品種の研究に関しては、2013年4月に独立行政法人農業生物資源研究所および京都大学と共同で、収穫量が現在のコシヒカリに比べ約15%多いコシヒカリの新品種開発に成功しました。

廣津准教授らはまず「ポジショナルクローニング」という技術を使って、インドのインディカ型イネ品種「カサラス」から、コメの粒を長くかつ重くする遺伝子を特定しました。そして、コシヒカリとカサラスを交配させ、カサラス型の遺伝子をもつコシヒカリの新品種を開発。新品種のイネはコシヒカリに比べ、粒が長くかつ重くなり、作付面積1アール当たりの収穫量はコシヒカリの64kgから76kgへと、約15%も増加したのです。

コシヒカリ(左)と、インドのインディカ型イネ品種「カサラス」と
コシヒカリを交配させた新品種のコメ(右)

「陸上で育つ一般的な植物は、全体が水没すると生育できません。しかし、陸上でも水中でも生育できる水陸両生植物という仲間も存在します。この水陸両生植物はなぜ水中でも生育できるのか?そのメカニズムを分子レベルで解明することを目指しています」

現在その新品種のイネを、暑さで有名な館林市に隣接する板倉町の田んぼで栽培し、実用性を検証しています。田んぼは、板倉キャンパス近くの地元農家が研究のために提供してくれました。廣津研究室のメンバーは週に一度はキャンパス近郊の田んぼを訪れ、より収穫量の多いイネの作出に挑戦しています。

環境変化に強いイネの開発としては、大気中の二酸化炭素濃度の増加に合致したイネの新品種開発にも取り組んでいます。

「現在の大気中の二酸化炭素濃度は約400ppmですが、50年後には600ppm程度まで増加することが予想されています。将来予想される環境変化に適合したイネの開発も必要になるはずです」

植物の環境応答メカニズムの秘密を探る

廣津研究室では、水陸両生植物の環境応答
メカニズム解明にも挑戦しています

植物は大きな移動能力を持たない一方で、周囲の環境の変化にうまく対応して生きています。植物が環境変化に対応するメカニズムを明らかにすることにより、環境変化に強い植物をデザインするためのヒントが見つかるでしょう。廣津研究室では、イネ以外にも、環境変化に強い植物を対象にした研究も行っています。

「陸上で育つ一般的な植物は、全体が水没すると生育できません。しかし、陸上でも水中でも生育できる水陸両生植物という仲間も存在します。この水陸両生植物はなぜ水中でも生育できるのか?そのメカニズムを分子レベルで解明することを目指しています」