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第90回 東京箱根間往復大学駅伝競走 「その一秒をけずりだせ」

第90回 東京箱根間往復大学駅伝競走 「その一秒をけずりだせ」

2013年11月26日更新

第90回 東京箱根間往復大学駅伝競走
「その一秒をけずりだせ」

自らの記録に挑戦したが、総合優勝を逃し2位に終わった第89回箱根駅伝。この「完敗」から原点に戻り、一からチームを作りなおす再出発を誓いました。そして新生・東洋大は2013年出雲駅伝、全日本大学駅伝でまたも2位。優勝にあと一歩近づけない。リベンジは、この箱根路で。一秒でも前へ、鉄紺の誇りを胸に攻めの走りで戦います。

『陸上競技マガジン』などのライターとして活躍し、本学箱根駅伝初優勝時のエピソードをまとめた『魂の走り』(埼玉新聞社刊)などの著書がある本学卒業生の石井安里さん(2001年3月社会学部卒)に、前回の箱根駅伝から今日の鉄紺チームの成長を描いてもらいました。

エースが引っ張るチームづくり

2012年度の学生3大駅伝(出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝)はすべて2位で、無冠に終わった。そして今季、東洋大として初の3冠を目指したが、10月14日の出雲、11月3日の全日本で駒大に敗れ、5大会連続の2位。すでに3冠の夢は潰えたが、最終章の箱根にすべてを懸ける。

2012年の88回大会では、10時間51分36秒の大会新記録で圧勝したが、そのときも涙の全日本2位から、4年生のリーダーシップのもと、全員の力を結集して頂点に立った。当時の2年生が4年生になり、今では主力に。彼らは入学時から東洋大史上最強と言われ、存在感を示してきた。

下級生の頃は、柏原竜二(現・富士通)らに引っ張られるように実力を伸ばし、双子の設楽啓太、悠太兄弟、大津顕杜が88回大会の優勝メンバーに名を連ねた。3年生になった昨季は、延藤潤と佐久間建が全日本に初出場、箱根で5区を走った定方俊樹は、1年時の出雲以来の駅伝出場だった。

最終学年を迎えるにあたり、酒井俊幸監督は、それまで学年主任を務めてきた小池寛明に代わり、エースの設楽啓太を主将に指名した。箱根駅伝で敗れた翌日の1月4日、東洋大としては異例のスピードでの主将就任だった。かつての柏原のように、エースが背中を見せて引っ張ることでチームが変われるように、さらに啓太自身も成長できるように願っての決断だった。

リーダー役を務めたことのなかった啓太にとっては驚きだったが、「監督から『お前はエースだから』と言われて納得しましたし、自分の行動、生活意識をしっかりすることで、みんなも付いてきてくれると思いました」と、責任感を持ち、競技で結果を残すことでチームを牽引してきた。

酒井監督によると、これまでにない発想で行動するなど、視野も広がり、新しい一面をのぞかせているという。

弟の悠太も、小池とともに副主将の任に就いた。ある選手は、後輩が使った椅子を片付けている悠太を見て、下級生の頃との変化を感じ取り「自分もしっかりしなくては」と、気を引き締めたそうだ。また、エースの設楽兄弟が他の選手よりも多く走っている姿を見て、負けられないと危機感を持ったという。走りで引っ張る設楽兄弟を仲間が支え、協力し合い、シーズン最後の駅伝を迎える。

第88回箱根駅伝では、大会新記録を樹立し優勝した。この記録に勝つためには、自分たちを越えていかなくてはならない

「最終学年がチームを引っ張ることを意識している」と大津顕杜。2 年次から有力メンバーとして本学を牽引してきた1人である

定方俊樹は前回の箱根駅伝初出場で5区山登りを任された。注目されることを逆手に「楽しむ気持ちで挑んだ」という。箱根ではプレッシャーをも跳ね除ける平常心が試される

入学時から、大注目されている設楽啓太・悠太のツインエース。今回、最後の双子タスキリレーにも期待がかかる

黒姫夏合宿では、駅伝シーズンに向けての練習と、チームの雰囲気づくりを行った。ここでの練習が実戦に生きてくる大事な準備期間だ(写真提供:東洋大学スポーツ新聞編集部)

服部勇馬の左腕には「その一秒をけずりだせ」の文字。出雲、全日本にかける強い決意が伝わる。服部は今年の出雲で区間新記録をマークした

10区間217.9kmを戦う箱根駅伝は総力戦。各選手が口をそろえる「選手層の厚さ」は、互いを高め合い、個々の底力を覚醒させるチームの伝統である

誰もが認めるエースに成長し、東洋大の顔となった設楽啓太主将と、兄の啓太とともにエースを背負ってきた弟・設楽悠太。箱根では、エースの意地をみせてくれるはずだ

陸上競技部を率いる酒井俊幸監督。「完敗」を宣言した日から、原点に戻り日々練習を重ね、チームをつくってきた。ここまでの大会を終え「このままでは終われない」と、箱根でのリベンジを誓った

一致団結、王座奪還へ

開幕戦の出雲は1区で出遅れ、5区で区間新記録をマークした服部勇馬(2年)が追い上げたが届かず。続く全日本では、酒井監督が「4年生を多く使うときは、狙っているとき」と5人の最上級生を起用。さらに、エントリーから外れた4年生6人全員をサポートとして現地に連れて行き、総力戦で挑んだが、出雲と同様にミスのなかった駒大に屈した。

2つの駅伝を終え、設楽啓太は「走る選手だけでなく、サポートを含め、全員が高い意識を持たないと勝てない」と話した。2年生で、先輩たちとともに勝った喜びを知る啓太だからこそ、今の東洋大に足りないものを感じたのかもしれない。

この2年、勝てなかった理由として酒井監督が挙げたのは、「ラストでの粘り、気迫、1秒の積み重ね」。最後の2~3kmを淡々と走るか、必死にスパートをかけるかの違いは大きい。積み重なれば、すぐに1分程度の差になってしまう。

全日本で6区を走った日下佳祐(4年)は「後半の2~3kmの走りで、10秒も20秒も違ってしまうことを、身を持って感じた」と言い、1区のラスト2.5kmで30秒以上の差を付けられた設楽悠太も「最後に切り換えられなかった」と悔やんだ。まさに今季のテーマである、1秒をけずりだす走りができなかった。だが、戦力は充実している。あとは勝利への気迫だろう。

王座奪還に向けては、4年生の団結力とリーダーシップが不可欠。夏までは、順調に練習を積んだ選手、徐々に調子を上げた選手、故障していた選手など、状況はさまざまだったが、それぞれに努力を重ねてきた。

全日本では、日下が4年目にして初の3大駅伝に出場。緊張したというが、小池や定方、佐久間からのメールに勇気付けられたとも。前回7区で快走した佐久間からは「俺でも区間賞を獲れたのだから」と励まされ、気が楽になったという。

定方は前回、山登りで日体大と早大に逆転を許し、悔しい思いをした。だがその悔しさは、出場したからこそ味わえるものだと実感した。また今年、母校の川棚高校(長崎)での教育実習で、全校生徒を前に挨拶した際、高校1年生の弟・駿君が最前列でじっと話を聞いていたという。2週間の教育実習で、家族や恩師、故郷の人々が心から応援してくれていると再認識。自分のためだと思うと妥協してしまうが、チームのため、応援してくれる人のためだと思うと頑張れると話す。

誰に聞いても、仲が良いと口をそろえる4年生たち。一方でライバル意識が強く、試合でも練習でも切磋琢磨してきた。勝つ喜びも、負ける悔しさも共有してきた4年間。集大成の箱根で、もう一度歓喜を味わえるだろうか。

毎年注目の集まる5区山登り。勝利を左右する『山』の強化は、どのチームも絶対条件としている。応援にも一層力が入る。写真は前回大会の5区タスキリレー

「納得のいく走りができなかった」と、自分の走りを振り返り、悔しさをにじませた淀川弦太。しかし、この1年間で着実に成長を重ねてきているのは確かだ

田口雅也は2大会について「不甲斐ない走り」と自らの走りを悔やむ。前回の箱根1区で魅せた快走を期待したい

「前を追うことだけを考えた」と、初駅伝を終えた日下佳祐は、優勝の難しさを口にした

箱根に向け“復活”の2文字を掲げた延藤潤。4年間の思いをぶつける        

出雲で駅伝デビューした期待の新人・服部弾馬。兄・勇馬の後を追いかけ、東洋大へ入学した。「たくさんの方から応援してもらえることが嬉しい」と、走る喜びを体感している