1. トップページ >
  2. TOYO people > 2014年度 >
  3. TOYO people:ライフデザイン学部 健康スポーツ学科 淺間正通教授
TOYO people:ライフデザイン学部 健康スポーツ学科 淺間正通教授

TOYO people:ライフデザイン学部 健康スポーツ学科 淺間正通教授

2014年7月31日更新

大切なのは正解を出すことじゃない。
そこに至るプロセスこそが財産なのです。

ライフデザイン学部 健康スポーツ学科 淺間正通 教授
ライフデザイン学部 健康スポーツ学科 淺間正通 教授

前任校から転任してきた昨年、担当する講義『英米と文化/英米の文化とことば』の履修学生数が、前期から約7倍に。

異文化コミュニケーション論や情報社会論など幅広い研究の視点と豊富な海外経験で、英語の講義を100倍面白くしてくれる淺間教授にこれからの英語教育のあり方や、グローバル社会を生き抜くヒントを伺いました。

フィンランドの「MIKSI=なぜ?」の理念で、英語教育を改革

そもそも私は、英語が苦手な少年でした。学校では、出来の良かった兄とつねに比較されていました。偏差値偏重主義の時代、高校1年生の頃には、「こんな点数じゃ、絶対大学へ入れない」とまで言われました。ところがある時、英語の担当が、イギリス留学から帰国したばかりの先生に代わったのです。するとその先生は、45点しかとれていない私のテスト用紙に、ひとつも「×」をつけない。間違っていても、「すごい! 限りなく正解に近い」などとコメントを書いてくれるんです(笑)。語学の間違いは、正解に近づくための大切なプロセスであって、「○」か「×」かでいう「×」ではないというのです。

この考えに影響されて以来、すっかり英語が好きになりました。高校卒業後は、その先生の刺激を受けてイギリスへ。その後も世界中を放浪し、多くの人々とのコミュニケーションを通じて、言語と異文化の面白さに目覚めました。そして、それが私の生涯の研究テーマとなりました。

さまざまな国でフィールドワークを行うなかで出会ったのが、フィンランドの「MIKSI(ミクシ)」の理念です。ミクシとは、英語の「WHY=なぜ?」の意味。フィンランドの教育現場では、とにかく教師が生徒や学生に「なぜその答えを導いたか?」「なぜそう思ったのか?」と突き詰める。高校時代のあの先生と同じです。正解かどうかより、プロセスを重要視しています。

日本の英語教育にも、このミクシの理念が必要ではないでしょうか。単なる暗記や詰め込みではなく、自分の頭で考えること。そのために、教育システムももっと進化しなければなりません。

デジタルとアナログのコラボで、生きた英語を身につける

デジタルとアナログのコラボで、生きた英語を身につける

私が提案しているのが、デジタルとアナログのコラボです。デジタル化で世の中が便利になったのは確かです。しかし反面、デジタルにだけ頼るライフスタイルには、驚きや発見がありません。たとえばカーナビは、行きたい場所へ効率よく連れていってくれる。しかし、まわり道して美味しい蕎麦屋を見つけたり、途中下車して地元の人と交流するようなチャンスは奪われてしまうでしょう。だからこそ、両者の良さを生かした「コラボ力」が必要なのです。

これを教育に取り入れたものを、「ブレンディッド・ラーニング」といいます。

ブレンディット(Blended)、つまり混合すること。パソコンを使ったeラーニングと、face-to-faceの対面教育。この良さをうまく組み合わせていく方法です。もちろん、現在もeラーニングは盛んです。しかし、今のやり方では「この時間はパソコン、この時間は対面」と、単に棲み分けているに過ぎず、うまくブレンドされていないのです。

今、私が研究しているのは、そこから一歩進んで、eラーニングのプログラムのなかに、対面教育の要素を取り入れることです。たとえば、設問に対して間違った回答をした場合は、すぐに正解を表示するのではなく、まずヒントとなるホームページへ飛ぶなど。まさにミクシの発想で、「なぜ?」と寄り道しながら考えるアナログ的プロセスを埋め込んでいくのです。

この研究は現在、講義に取り入れて成果を検証しています。 「なぜ?」を深掘りすることで、学生には、世界を見る独自の視点を形成してほしいと考えています。

異文化体験こそ、人間力の源

学生団体「異文化理解研究会」
学生団体「異文化理解研究会」。学生間で活発な意見交換が繰り広げられる

今年は学生団体「異文化理解研究会」を設立しました。私の講義に「刺激を受けた」と集まってくれた学生を中心に、現在、28名が参加しています。勉強会やディベート、フィールドワークを通してさまざまな意見交換を行い、異文化への扉をどんどん開けていってもらいたいと思っています。

最後に学生の皆さんに伝えたいのは、「摩擦を恐れるな」ということ。かつて私が体験したような「放浪の旅」に出ろとまでは言いません。ただ、短期間でもいい、国内でもいいから、ぜひ一人旅をしてみてほしい。言葉や文化、価値観の違いからくるさまざまなトラブルという名の摩擦に、一人で立ち向かう体験をしてほしいのです。摩擦は面倒だし、傷つくこともあるでしょう。しかし、それを自力で解決していくステップこそが、これからのグローバル社会を生き抜く底力になるはずです。異文化を知ること。それは、人間力を鍛えることでもあるのです。

プロフィール

淺間 正通(あさま まさみち)

上越教育大学学校教育研究科卒業。商社や予備校講師、公立高校教員などを経験。その後、静岡大学教員、カルフォルニア州立大学チコ校客員研究員を経て現職。静岡大学名誉教授、異文化間情報ネクサス学会 会長。

サイトライフデザイン学部