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TOYO people:新任教員インタビュー(国際地域学科 岡本郁子教授)

TOYO people:新任教員インタビュー(国際地域学科 岡本郁子教授)

2014年5月24日更新

研究とは「驚き」と「発見」の積み重ね。
トラブルや失敗を糧にするしなやかさが大切です。

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国際地域学部 国際地域学科岡本 郁子 教授

急速な民主化が進むミャンマー。今や、世界中からビジネスパーソンや観光客がドッと押し寄せる注目の国だ。しかし、ブームとは関係なく、閉ざされた時代から長年この地でフィールドワークを積んできた人がいる。

岡本郁子教授。日本では数少ないミャンマー農業経済研究者のひとりである。その素顔と、今まさに“旬”の講義を紹介します。

運命に導かれたミャンマー研究との出会い

実は、父の仕事の関係で、中学の3年間をミャンマーで暮らした経験があったんです。当時は、社会主義体制でビルマと呼ばれていた頃。本当に貧しくモノがない時代で、うちの両親など、赴任にあたって3年分のトイレットペーパーや文具を日本から持っていったくらいです。首都に住んでいましたが、自家用車はほとんど走っておらず、家の前には牛がデンと座っていたような時代です。豊かな日本と比べれば、天と地ほどの違いでした。

あの3年間が私の原体験となったのでしょうか。大学院修了後は「発展途上国の開発にかかわりたい」と、アジア経済研究所に入所。そしてそこで任命されたのが、何の運命か、ミャンマー担当でした。以来、ミャンマーとは20年以上のつき合いになります。

経済とは「人」を対象にする学問

経済とは「人」を対象にする学問専門は、大きく言えば「開発経済学」です。途上国の飢餓や貧困の問題をどう解消するか。そのひとつとして、農村を取り巻く経済メカニズムや問題点を明かすのが私の研究です。なんだか難しく聞こえるかもしれません。しかし、経済の研究対象は、結局は「人」。現地へ行って、人と向き合うのが基本です。

私自身、ミャンマーへはこれまで何度も足を運びました。最初は言葉もままならない。けれど、コミュニケーションしたい気持ちさえあれば、なんとかなるものなんですね。。もっとも、現地の人によれば、今も私のミャンマー語はなまりがあるようですが、そこは愛嬌です(笑)。

米の政策に関する調査をしたかと思えば、小舟に乗って漁村を回りエビ漁の実態調査もした。現在は、森林資源管理の研究も行っています。ただ、分野は広がっても、私の関心はひとつ。それは、「いかに農村の暮らしに豊かさをもたらすか」です。

そんなこれまでの研究成果を、東洋大学では、今期、『国際食糧問題論』や『農村地域開発論』などの講義に反映させています。国際地域学部では、これからどんどん現場に出ていこうと意欲に燃える学生がたくさんいます。その前に身につけておきたい基礎概念を、ここでぜひ体系的に学んでほしいと考えています。

何度も窮地に追い込まれました

実際現場に行けば、いろいろなハードルが待ち構えています。私も話し出せばキリがないほど、いろいろなことがありました。

今も懐かしく思い出すのは、1998年にミャンマーの農業灌漑省の客員研究員として2年間の予定で赴任した時のことです。生後10カ月の息子を連れての赴任でした。最初の半年は、生活環境を整えるだけで文字通り必死の毎日でした。電話線はしょっちゅう切れるし、電気も計画停電で1日8時間くらい止まってしまうこともある。熱帯気候の蒸し暑さのなかで、食べものは傷むし、電気が来ないので扇風機も回せず乳児の息子にとってはかなりつらい状況。そのままでは、とても研究どころではありません。そこで意を決して比較的ライフラインが安定しているのはどこかと探し回った結果、とある政府要人宅の真ん前の家をみつけることができました。当時のミャンマー特有の状況かもしれませんが、要人の家のまわりは電気が安定的に来るんですよね。何事もあきらめなければ道は開けるとつくづく思いました(笑)。

思いどおりにならないから面白い

「さあ、調査に出かけるぞ」と勢い込んでも、まず政府機関に許可をとるだけで何ヶ月もかかることもあります。道路が寸断されて目指した場所へたどり着けない、などというトラブルに見舞われることもあるでしょう。現場は、思いどおりにならないことだらけなんです。そんなとき大切なのは、すぐに「失敗」だと結論づけて、落ち込んだりあきらめたりしないこと。「じゃあ、次の手段は?」とセカンド・ベストを考える柔軟さです。

そもそも計画どおりいかないからこそ、驚きがあり、発見があります。研究とは、その積み重ねなのです。恥をかいてもいい。皆さんには、失敗や想定外のできごとを恐れず、果敢に挑戦していってほしいと思います。

これまでの研究生活は、山あり谷あり。決して順風満帆だったわけではありません。けれど、どんな苦しいときも、ミャンマーの農村に立てばなぜか元気になってしまう。研究者としてだけでなく、人間としてのエネルギーをもらえる気がするのです。皆さんもぜひこの学生生活で自分の専門分野を見つけてください。自分の選んだ道からは、必ず大きな宝物を得られるはずです。

プロフィール

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岡本 郁子(おかもといくこ)

1990年上智大学外国語学部卒業、1992年、修士(スタンフォード大学・Food Research)、2006年、博士(京都大学・地域研究)。1992年アジア経済研究所入所。2006~2008年津田塾大学非常勤講師。2014年より現職。