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Close-up!旬な取り組みを紹介:フランス共和国 国民教育・高等教育・研究大臣による講演・学生との対話集会を開催

Close-up!旬な取り組みを紹介:フランス共和国 国民教育・高等教育・研究大臣による講演・学生との対話集会を開催

2016年6月1日更新

ナジャット・ヴァロー=ベルカセム大臣が来校
大学・教育のありかたを語る

5月17日(火)、男女共学100周年企画として、フランス共和国 国民教育・高等教育・研究大臣のナジャット・ヴァロー=ベルカセム氏を招き「21世紀を生きる大学とは?」をテーマとした講演と、学生との対話を白山キャンパスで行いました。

東洋大学について「伝統と近代性がうまく結びついた大学。質の高いカリキュラムがあり、フランス語の教育を受けている人が2500人もいるそうですね」と話した大臣は、まず21世紀の大学のありかたについて、フランス国内や世界の現状を踏まえて次のように述べました。

「変化の激しい現代において発生するさまざまな課題を解決するための知識や資格、能力を身につける場として、大学は非常に重要な役割を果たします。

長い間、大学はエリートのためのものでしたが、今では多くの人に門戸が開かれ、多くの国で学生数が大幅に増えています。学生のバックグラウンドも多様になり、目指す職業もさまざまです。そのため、一人ひとりが最も能力を発揮し、成功を収められるような教育が必要になります。今後はデジタル技術を活用して、よりパーソナライズした教育が行われていくことでしょう。

大学は国や都市の中心として、学生たちに意志を与え、考察を促すところです。大学の教育は若者だけでなく、外国人も含めた全人口に対して開かれたものであるべきです。フランスでは、より多くの学生を受け入れる準備を整えています。現在ヨーロッパは難民の問題を抱えており、フランスも例外ではありませんが、異なる文化をもつ人たちも気持ちよく迎え入れることができればと思っています。

日本とフランスは、教育に対する考え方が近いと感じています。両国が協力して、21世紀の教育を作り上げていければと思います。」

講演会1
ナジャット・ヴァロー=ベルカセム氏
講演会2
全キャンパスに同時中継し、会場と合わせて約270名の学生が参加。

鋭い視点からの質問があがった学生との対話

講演会3講演会4

後半は、学生たちから寄せられたさまざまな質問に答えていただきました。

Q:今後、持続可能な地球社会を構築していく上で、新しい環境教育のあり方が必要になってくると思いますが、フランスの環境教育ではどのような点が必要とされていくとお考えですか?実際の取組みとあわせて教えてください。


A:まず、学校のカリキュラムの中で、持続可能な地球社会について子どもたちに考えさせるような教育を行うべきだと思います。例えば、地理、歴史、哲学、経済などの教科を通じて、環境破壊を身近な問題として捉えられるような教育していくべきです。そして、世界で起こっている環境破壊は私たちが直面している現実であり、それに対して私たち個人が行動できることがあると教えること、気づかせることが重要だと考えます。実際に、昨年度フランスにおいても、小学校から高等教育に至る全ての教育課程においてカリキュラムの改定を行いました。
また、国が学校独自の教育プロジェクトへ支援を行うことも必要だと思います。例えば、授業の一環として野菜作りに取り組むことを通して、大都会で生活していてはわからないような季節性を学び取ることを目的とした教育プロジェクトを政府が支援して行っている例があります。他にも、COP21が昨年度フランスで開催されたことを契機として、各学校で国際的な交渉シミュレーションの授業を行った例があります。小学校高学年から大学生までがこの授業に参加し、それぞれ他国の立場から自分の主張を伝え、相手の説得を試みました。これはCOP21終了後のこれからも継続していきたい取組みのひとつです。


Q:インド・アフリカの孤児院でボランティアをし、その経験を日本の子どもたちに話したのですが、なかなか世界の貧困を身近な問題として捉えてもらうことが難しいと痛感しています。貧困国の現状などを子どもたちに伝えるには、どうしたらよいでしょうか。


A:フランスでは学生連合など、学生同士が連携して行う活動を法律で認めています。また、学生のNGOや海外人道援助活動への参加を単位として認めています。大学は理論を学ぶだけの場所ではなく、経験を与える場所であることが大切です。他人の利益のために行うヒューマニスト的な活動経験というのはとても大切で、あなた(質問者)の他国における人道援助活動経験は今後の人生において非常に尊いものになるでしょう。あなたが今後、人間関係や自国の問題に直面したとき、「世界にはもっと大きな問題がある」と気付いたり、それを他人に示すことができるからです。このように、活動を通して文化の多様性や世界の抱える問題に触れ、自分の生活を俯瞰して見ることができるようになることはとても大切です。この経験は在学中のみならず、卒業後も人生に大いに役立つはずです。日本においても、そうした活動にもっと学生たちが参加しやすくなること、様々な国の現状を直接見る機会を学生が得ることが重要ではないでしょうか。


Q:フランスで懸念されている不平等さや差別の問題に対して、国民教育・高等教育・研究省はどのようにアプローチしていますか?


A:おっしゃる通り、フランスでは不平等さと差別をどうするかということが大きな問題になっています。教育は平等であるべきですが、私は大臣になってから、それぞれの学校に均等に教師の数を増やすのではなく、それぞれの学校の現状に応じて教師を配分するようにしました。同じ学校でも、地域によっては貧困を深刻な問題としているところもあります。学校別に支援を不平等化することによって、全体の平等化を図りました。
21世紀の大学は、20世紀までとは大きく異なり、エリートのみを受け入れる場所ではなくなりました。従来のように大きな教室で全員に同じように教えるのではなく、理解度の異なる学生に対して、たとえば教室内で小グループを作るなどの工夫を学校が施し、それぞれの学生に教え方を変えながら授業を進めることが求められています。
家庭教育がその家庭ごと、子どもごとに異なるように、学校においてもそれは同じで、均一でない能力や文化をもつ子どもたちに適応する教育を国は提供していかなくてはならないと考えています。


Q:フランスに滞在した際、宗教的な多様性を感じましたが、宗教教育は学校で行われるべきでしょうか? それとも、政教は分離されたほうが望ましいのでしょうか?


A:フランスは政教分離の国ですが、決して宗教の話が教育の場でタブーというわけではありません。むしろ、宗教の歴史は学校のカリキュラムの中で教育されなければならないと思います。私立とは違い、公立学校の宗教教育は、歴史的にどのような宗教が存在し、文化的・社会的にそれがどのような役割を果たしてきたかを客観的に教えることが肝心です。宗教を自分勝手な空想によって誤解することがないように、本当はどの宗教も文化も共存できるのだと教えることが大切でしょう。
誰でも好きなことを信じる権利、信じない権利が平等に保証されるために、フランスでは政教分離がとても重要です。そのために、公的機関は宗教的にニュートラルであるべきで、宗教ごとに偏った印象を与えないように配慮しなければなりません。


Q:子どもを産んでも仕事を辞めざるを得ない女性がいまだに多く、出生率が低い日本。それに対して、フランスではほとんどの女性が働いているにも関わらず出生率は2.0台といいます。支援に何か秘訣があるのでしょうか?


A:日本においても、安倍首相が女性活躍に関する施策を進めていますね。私は前職で女性権利大臣を務めていましたが、その経験を踏まえて申し上げますと、国際的課題も含めて女性の地位向上に対して政治が果たせる役割は3つあると考えます。
1つめは、現状の法律が女性を差別していないかを見直してみることです。フランスには、女性の投票権がない、夫の許可なく銀行口座を作れないなど、女性を差別した法律がいくつか存在していました。それらの廃止によって、女性の社会的地位は大きく前進しました。
2つめは、女性活躍に関する法律や政策を打ち出すことです。男女平等に関する法律や、給料や職業に男女差がつかないような法整備、また2歳から保育園を利用できるようにしたり、保育園の数を増やすための公的政策を進めるなど、仕組みや枠組み自体にメスを入れることが重要になります。
最後に、教育によって、個人がもつ先入観を排除することです。法律や政策が整備されてもなかなか男女の不平等がなくならないのは、この「先入観」が原因だと言えます。女性はこうあるべき、男性はこうあるべきだというような考え方の解体を、子どもが小さい時から学校教育で行わなければいけないでしょう。これに関連して、フランスで実際に調査を行ったのですが、学校の先生方は、男女の児童に対して接し方を変えていることがわかりました。これは先生が善意をもって行っていることではありましたが、まず先生自身がそのような先入観を取り払い、男女が平等であるための教育を小学校の早い時期から子どもに施すことがとても重要だと考えます。


Q:女性の社会進出、社会的地位向上を推進するための施策は? また、男性は理想的な社会を作るためにどのような役割を果たすべきでしょうか。


A:女性の権利を前進させるには、男性の協力も必要です。フランスでは、男性が子育てに参加しないことが問題になっており、離婚するカップルも多いのが現状です。そうした男性たちは、離婚してしまうと子どもに会うことすらできなくなってしまうこともあり、若いころに子育てに時間を割かなかったことを後悔する現実もあります。まずは男性がもっと自分の子どもに対して時間を割くことが必要なのではないでしょうか。また、企業も男性の育児参加に寛容になるべきで、たとえば男性が育児休暇を取得することで、同僚から後ろ指を指されることがないようにしなければなりません。
日本において男性が果たせる役割は何かというと、これは女性についてもそうですが、ぜひ政治家を将来的な選択肢としてもち、やがて大臣になって、法律を変えていくような目標をもってくれたらと思います。

フランスの現状は、日本と似ているところもあれば、見習うべき点も多くあることが分かりました。普段なかなか聞くことのできないお話ばかりで、学生にとっては貴重な対話の場となりました。