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学生研究奨励賞論文「医療供給分析~地域医療から見た医療救済策とは~」

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氏名:広瀬 まみ
主査教員:中澤 克佳

論文要旨

本論文は、わが国の医療供給体制における問題点に注目し、解決策を提案する政策提言論文である。具体的には、医療需要の増加と「医療崩壊」と呼ばれる医療供給体制の現状を踏まえ、地域医療を支える自治体病院の経営状況に注目し、再生と財源確保の方策を考察している。
はじめに、第1章ではわが国の医療をめぐる制度と現状について整理をおこなっている。わが国の医療保障制度の特徴は、国民皆保険制度とフリーアクセスの保障にある。わが国と同様に公的な医療保障体制を広く取っている欧州諸国においても、何らかの形で医療へのアクセスを制限しているケースが多い。一方、安く・どこでも医療にアクセスできるわが国では、患者の医療へのアクセスが他国よりも抜きん出て多い。これに進展する高齢化によって、医療へのアクセスは今後とも増加していく事がわかる。一方、供給サイドでは医療費抑制や医師不足を通じた「医療崩壊」と呼ばれる供給体制の綻びが明らかになってきている。本論文では、これら背景を公的統計データ等を丁寧に参照しつつ整理している。

続く第2章では、地域医療の拠点である自治体病院に焦点を絞り、その現状と経営状況を地方財政制度を踏まえつつ明らかにしている。全国の自治体病院に関して、黒字・赤字に分けて経営状況の比較検討を行っている。その結果、低い診療報酬によって十分な医療収入を得ることができない赤字病院に対して、財政状況の厳しい自治体による補てんは限界があり、現状では地域の医療をになう自治体病院の破綻は免れないと指摘している。
以上の分析を受け、第3章では具体的に必要な医師数を確保するための費用シミュレーション、具体的な財源としての消費税税率の設定、そして確保した財源の配分方法についての提言をおこなっている。財源の分配に関しては、先行研究を参照しつつ「施設(病床)当たりの医師数」と「人口当たりの医師数」で評価した4象限の散布図を用いて提言を行うことで、増大する医療需要に対して地域料供給体制をどのように立て直すかを検討した論文となっている。

主査講評

医療問題は、多くの利害関係者と複雑な制度からなる問題であり、専門家による議論も百家争鳴といった感がある。安易に卒業論文として医療問題に取り組んだ場合、おそらく表面を軽く撫でただけの浅い論考に終始するか、議論が迷走してしまうだろう。しかし、広瀬論文はこの複雑な問題を非常に明快に論じている。その理由としては、広瀬論文では需要を抑制すること、また現行の医療保障体制を崩すことを是とせず、医療供給体制の立て直しを考察している(考察することに決めた)からであろう。
広瀬論文では第1章において、わが国の医療をめぐる制度と現状について整理を通じて、国民皆保険制度とフリーアクセスの保障によって需要が過剰である点と、医療費抑制政策等を通じて医師供給が過少であり、地域偏在があることを丁寧に説明している。その上で、「需要を抑制する方策」ではなく「負担を増やしても供給を増加させる(維持させる)」という価値判断を明確にすることを通じて論旨を明確にしている。丁寧に制度や現状を踏まえつつ、価値判断(評価軸)を明確にすることによって、論旨を明快にしつつ丁寧な議論ができている。
形式面においても膨大なデータや引用を丁寧に整理しており、グラフや表も1次資料から独自に作成している。また、医療のみならず地方財政分野にも目を配っており、論文作成に費やした努力の跡が見て取れる。さらに独自の分析をおこなっており、学部卒業論文として出色の出来であると判断する。現状把握と整理、分析に分量を割きすぎたため、提言である消費税の目的税化の根拠と妥当性についての検討がやや足りないと感じるが、その点を加味してもなお卒業論文としての価値は高いと判断する。

受賞の感想・今後の抱負

医師不足問題が多くのメディアで取り上げられていたことや、家族が入院して医療供給体制の緊迫した様子を目の当たりにしたこともあり、3年生の頃から卒業論文のテーマは「医療供給体制の解決策」にしようと決めていました。また経済学部ということもあり、最終的には財源の問題に触れていきたいと考えていました。しかし、医療の問題は多岐に渡り、論点を絞っていくのに苦労しました。
今回このような素晴らしい賞を頂けたことを大変嬉しく思います。これはひとえに自分自身の力だけではなく、所属ゼミの教員である中澤先生や友人から有益なアドバイスを頂けたからであると考えます。本当に深く感謝しております。
経済学部総合政策学科に在籍して、データを集め、図表を独自に作成し、提示した資料を根拠に政策提言まで出来るようになったことは、私にとって非常に有意義なことでした。また、政策を考えられても財源を確保出来なければ政策は実現できないということを、ゼミを通して学び、財源にも目を向けられるようになりました。この卒業論文が医療供給体制の解決策として効果的なものであれば幸いです。
卒業後も、社会保障分野(医療・年金・福祉・介護等)について目を向け、日々の暮らしに関わるこの分野についての問題解決策を、大学で学んだことを活かして、真剣に考えられる人間でありたいと思います。

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