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伊藤政博教授の研究グループら、新しいイオンチャネルを発見

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研究成果のポイント

  • 好アルカリ性細菌から新規な非選択性陽イオンチャネルを発見
  • 電位依存性チャネルの新たなイオン選択フィルターを発見
  • 神経情報伝達や遺伝的疾患を引き起こす原因解明にもつながる電位依存性ナトリウムチャネルの理解に貢献する発見

<<背景と概要>>
電位依存性ナトリウムチャンネルというのは、神経科学の分野では非常に重要なたんぱく質であり、その分子メカニズムの解明は、この分野の発展に寄与します。
これまで微生物由来の電位依存性ナトリウムチャネルが2002年に初めて発見され、その構造の単純さから、その分子メカニズムの解明の実験材料として利用されてきました。
今回の成果は、この電位依存性ナトリウムチャネルファミリーからナトリウムイオン以外が流れる新種を発見し、その流入するイオンの選択フィルター領域の特徴を明らかにしたことにあります。

概要

高アルカリ性細菌Bacillus alcalophilusのべん毛染色写真
好アルカリ性細菌Bacillus alcalophilus
べん毛染色写真
神経細胞内における情報の伝達は膜電位の脱分極によって行われます。膜電位は様々なイオンチャネルによって調節されていますが、その中でも電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)は膜電位の速やかな脱分極に関与する重要な膜タンパク質であり、変異による活性変化は様々な遺伝的疾患を引き起こす原因となります。このように、これらのチャネルの分子メカニズムを明らかにすることは神経情報伝達を分子レベルで理解するために非常に重要な研究対象です。

既にカリウムイオン(K+)を輸送する電位依存性カリウムチャネルの分子構造と選択的K+透過機構に関する研究では、2003年にロックフェラー大学のRoderick MacKinnon教授がノーベル化学賞を受賞しています。しかし、ナトリウムイオン(Na+)やカルシウムイオン(Ca2+)のイオンチャネルの選択的イオン透過機構と生理的機能はいまだに未解明な点が多くあります。この知見のギャップを埋めるために真正細菌の電位依存性ナトリウムチャネル(NaChBac channel)が、ナトリウムイオン輸送および選択的Na+透過機構の構造的基礎を研究するためのモデル系となっています。

東洋大学生命科学部生命科学科の伊藤政博教授の研究グループは、ハーバード大学医学部・ボストン小児病院のDavid Clapahm教授のグループおよびマウントサイナイ医科大学のTerry Krulwich教授と共同で極限環境微生物の好アルカリ性細菌Bacillus alcalophilus(バチルス・アルカロフィラス)からNaChBacファミリーに属する新規な電位駆動非選択性陽イオンチャネル(Voltage-gated non-selective Cation channel、NsvBa)を発見しました。このチャネルは、電位依存性ナトリウムチャネルとして機能するファミリーのものが進化の過程で他の陽イオンを利用できるようにイオン選択フィルターの部分が適応進化したものと推定されます。

【真核生物の電位依存性Naチャネルと原核生物のNaChBacの概略図】

図2

(A)高等生物のナトリウムチャネルは複雑で巨大な膜たんぱく質であり構造解析が困難な試料である。
(B)原核生物由来電位依存性ナトリウムチャネル(NaChBac)はホモ四量体構造で対称性が高く、精製試料の大量調製が可能であることから構造解析に適した試料として扱われている。

これまで発見されているNaChBacファミリーに属するタンパク質は、すべてNa+かLi+のみを輸送することができました。しかし、今回のタンパク質は、結果としてナトリウムイオン(Na+)、リチウムイオン(Li+)以外にカリウムイオン(K+)、ルビジウムイオン(Rb+)、カルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)、バリウムイオン(Ba2+)といった陽イオンを輸送することができる新規な非選択性陽イオンチャネルであることがわかりました。

【各種電位依存性イオンチャネルのイオン選択フィルター領域のアライメント】

図3

イオン選択性に関わる選択フィルターは、5番目のヘリックスと6番目のヘリックスの間に存在する。
好アルカリ性細菌Bacillus alcalophilus由来のNsvBaは、NaChBacファミリーに属する電位依存性チャネルの中でNa+以外も輸送できる非選択性陽イオンチャネルの初めての報告例となる。

今回の発見は、これまでの未解明な点が多かった電位依存性ナトリウムチャネルの選択的イオン透過機構の常識を覆す研究報告で、神経情報伝達や電位依存性ナトリウムチャネルに起因する遺伝的疾患を引き起こす原因解明にもつながるものです。

東洋大学生命科学部とバイオナノエレクトロニクス研究センターでは、これまで極限微生物の生態および分子生物学的解析とその利用を他の大学に先駆けて積極的に展開してきました。今回の成果はその現れといえます。

表. NaChBacとNsvBaのイオン選択フィルターへの変異導入とチャネル透過陽イオンの関係

図4

備考

科研費文部科学省※本研究の一部は、文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究「運動超分子マシナリーが織りなす調和と多様性」研究No. 24117005によってサポートを受けました。

研究論文名:

Ionic selectivity and thermal adaptations within the voltage-gated sodium channel family of alkaliphilic Bacillus
(好アルカリ性バチルス属細菌の電位依存性ナトリウムチャネルファミリーのイオン選択性および温度適応性)
著者:Paul G. DeCaen※1, Yuka Takahashi※2,※3, Terry A. Krulwich※4, Masahiro Ito※2,※3, David E. Clapham※1,※5✝

※1) Howard Hughes Medical Institute, Department of Cardiology, Boston Children's Hospital, 320 Longwood Avenue, Boston, MA 02115, USA
※2) Graduate School of Life Sciences, Toyo University, Oura-gun, Gunma 374-0193, Japan
※3) Bionano Electronics Research Center, Toyo University, Kawagoe, Saitama, 350-8585, Japan
※4) Department of Pharmacology & Systems Therapeutics, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, One Gustave L. Levy Place, New York, NY 10029
※5) Department of Neurobiology, Harvard Medical School, Boston, MA 02115, USA

公表雑誌:

 オンラインジャーナル『eLife』 2014年11月11日公開

  • 「eLife」(イー・ライフ)・・・2012年の10月に創刊された比較的新しいJournalであり、編集委員長をノーベル医学生理学賞者が務めるなど生命科学分野での注目度が高い。

    論文はこちらからご覧下さい:「eLife

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