電気電子情報工学科

明日の地球につながる技術

機能創発ナノバイオエレクトロニクス研究室(根岸良太 教授)

新規ナノ炭素材料の創成および次世代電子デバイスへの応用研究

今日の高度情報通信社会は、マイクロプロセッサの飛躍的な性能向上により支えられています。マイクロプロセッサを構成する基本素子である半導体トランジスタはその性能向上に向けて、発明以来40年以上素子サイズのスケールダウンが推し進められ、現在そのサイズは数十ナノスケール(1ナノメートルは1mの10億分の1)にまで達しています。しかしながら、この極限的なスケールでは原理的に半導体トランジスタが動作しないため、性能向上の限界を迎えつつあります。そのため、従来の半導体とは全く異なる動作原理によるデバイスシステムの創発に向けて、電子や光・格子振動(結合した原子間のばねのような振動)などナノスケールで顕在化する物理現象を積極的に利用した新しい量子素子や、生体内で見られる揺らぎやノイズを利用した脳型素子の熾烈な研究開発競争がGoogleをはじめとした巨大企業や国家レベルで繰り広げられています。これらを利用したコンピューティングでは、従来の半導体デバイスの性能を遥かに凌駕する情報処理能力や超省エネルギー動作が期待されており、私たちの生活スタイルを一変させる大きな革命期を迎えようとしています。このようなデバイスシステムの創発では、材料工学に基づいた高度な構造や物性制御可能なナノ材料の開拓が必要不可欠です。例えば、2010年ノーベル物理学賞となった炭素材料の一つであるグラフェンの発見は、僅か1原子層の厚みしか持たない原子層という新しい概念のナノ材料工学分野を切り開くとともに、電子や光との融合による量子素子や脳型素子への応用研究が世界中で活発化しています。本研究室では、グラフェンなどのナノ炭素材料の構造を思いのままに操る形成技術の開拓や、電子や光との融合による量子素子や脳型素子への応用研究を推進します。さらに、ナノ炭素材料の生体材料との親和性を活用したバイオセンサーの開発も進めます。

この研究室を希望する方へ

新規ナノデバイスの創成は、物理学を基盤として化学・生物との融合が鍵となります。そのため横断的な研究分野を相互理解し、観察される現象に対して根気強く向き合い、制御や応用技術開拓に向けて柔軟に発想する能力が求められます。
当研究室では、化学を基盤とした1500℃を超える高温プロセスによる新しいナノ炭素材料の形成技術開拓や、物理学を基盤としてナノ材料で発現する物質本来の性質を解明し、電子工学を駆使したナノデバイスへの応用や生物との融合によるバイオセンサーの開発を進めています。
なぜ、空は青いのか?など身の回りにある当たり前な事象に疑問を抱き、科学の本質を理解することに興味のある学生さんを歓迎いたします。