応用化学科

持続可能な社会の実現に応える化学。

有機元素化学研究室(佐藤総一 教授)

典型元素を礎にした新規化学種の創製とその応用

元素の周期表は化学の根幹であり、その表から元素の様々な性質が読み取れます。中でも1,2,12~18族の元素は典型元素と呼ばれ、それら特性を発掘する研究が現在盛んに行われています。特に13~18族の第3周期以降の元素は、炭素原子を中心とした古典有機化学の概念を覆す、非常に興味深い性質を示すことが知られており、例えば、

1)高周期典型元素どうしの長い結合が作りづらい

2)高周期典型元素どうしの多重結合が作りづらい

3)最外殻電子数がオクテット側を越えた9以上の価電子数を有する高配位化合物(超原子価化合物)が比較的安定に存在する

などの特性が挙げられます。

有機元素化学研究室では、特に上記3)の特性に着目し、様々な高周期典型元素を中心とした珍しい高配位化合物、いわゆる超原子価化合物に焦点をあて、これまでこの世に知られていない結合形態を有する新規化学種の合成、構造解析、動的挙動、理論計算による解析等の研究を行っています。

このように発見された新たな化学種を新物質の創製に応用することができれば、既存の化学種のみで構築された物質と異なり、思いもよらない機能性を発現する可能性があるのです。また未知の化学種のラインアップを増やすことができれば、自ずとその組み合わせは膨大なものとなり、その中から大きなイノベーションを起こすことが可能な近未来型材料を見つけ出すことができるかもしれません。10年後、いや100年後を見据えた物質の基盤研究、そして後世まで残る化学の教科書に掲載される新規化学種の創製に共に携わってみませんか。

この研究室を希望する方へ

有機元素化学研究室は、元素に焦点を当てた研究を行っていますが、中身は有機合成化学が主となります。有機合成化学は実験しなければ何もデータが得られません。AとBを混ぜて反応させたら何になるだろうと頭でいくら考えても、実際の実験結果と同じ答えが得られるわけではありません。すなわち反応させないと何も始まらないのです。混ぜてなんぼの世界です。ということで毎日毎日実験漬けの日々になります。反応時間に何十時間を要することもあるでしょう。反応の処理も手間がかかりますし、反応生成物の精製にも神経を使います。でも手を動かすことが楽しい人、実験大好きな人にとっては天国なのです。しかもこの世に存在しない未知の化合物を自分の手の中で生み出せるのです。もしかしたら、それがノーベル賞級の化合物だったりするかもしれません。そうです、有機化学にはこういったご褒美もあるのです。こういった感覚を一度味わうと、病みつきになります。実験大好きな人、探求にのめり込める人、そうそんな人向きの研究室です。