応用化学科

変革する社会に応える化学。

分子分光研究室(藤野竜也 教授)

反応の時間スケールで分子を見る・見たい分子を選択的に高効率にイオン化させ検出する

発病後に治療を行う現代医学ではなく、将来発病する可能性のある疾病を健康な状態のうちに把握し、発病を未然に防ぐ技術の開発が医療の進歩には欠かせません。これにはバイオマーカーと呼ばれる疾病の危険信号物質、一般には低分子量の生理活性物質(ホルモン、毒、麻薬、農薬等を含む)を、血液や尿の分析から把握する作業が必要です。血液や尿中には目的分子だけでなく多量の不純物が含まれており、分光法による電子や振動状態の情報だけでは物質を同定することは困難であり、また同様に電気化学的手法を用いても分析は困難です。このような場合、試料を非解離で観測し、その分子量を特定できる質量分析法が威力を発揮します。質量分析法では、小数点以下数桁の精度で分子量を決定することが可能であり、原子組成から分子構造を決定することも可能です。マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法は、分子を非解離でイオン化し、分子量により質量分析を可能にする手法の一つであり、不純物に寛容、操作・装置が簡便、といった多くの利点を持ちますが、同時に測定に利用するマトリクス分子の開裂によって低分子量試料の測定はできないという欠点を持ちます。また感度が悪く、イオン化できない分子が多数存在します。このためMALDI法の持つ利点を生かしつつ問題点を解決できる新奇な非解離レーザーイオン化法の開発が求められます。

このような背景から、主に以下に挙げる研究を行っております。

(1) 機能性マトリクスの開発

分子の包接特性や酸化物個体表面、または金属・半導体ナノ微粒子を利用し、従来法ではイオン化・検出が出来なかった生理活性物質や禁止薬物及びその代謝物を尿などから直接的に前処理なく検出できる手法を開発しています。

(2) レーザーイオン化法のメカニズム解明

分子のダイナミクスを観測できる時間分解分光法と質量分析法を組み合わせた新しい測定法を開発しました。これによりピコ秒(10-12秒)からフェムト秒(10-15秒)といった化学反応が実際に起きる時間スケールで、脱離・イオン化過程を観測できます。さらに分子科学計算の手法を組み合わせることで、従来MALDI法や我々が開発する新奇イオン化法のメカニズム解明を行っています。

(3) 時間分解分光法による反応初期過程の研究

吸収や蛍光、ラマン、テラヘルツといった分光法から得られる情報をピコ秒からフェムト秒の時間領域で分解しながら観測する「時間分解分光法」を行っている。これによりナノスペースにおける有機分子のダイナミクスや温度応答性子分子の相転移ダイナミクスなど様々な物質をターゲットにして、その反応初期過程を追う研究を行っている。

この研究室を希望する方へ

研究は学部3年までの勉強と全く異なります。勉強が良くできたからといってよい研究ができるとは限らず、逆に勉強が良くできない人が素晴らしい研究成果をあげたりすることもあります。要するに、研究を自分のものとして「どれだけ楽しめるか」がポイントとなります。自分の興味に合っていない仕事を嫌々やっても全く面白くありません。このような場合、皆さんだけでなく教員側も双方が不幸です。ですから固定観念にとらわれず自分の持っている興味を大切にし、その興味が当研究室の内容や方向性と少しでも合っていたら志望してみてください。研究するときはする、しないときはしない、というメリハリの利いた研究生活を送ってください。