生命科学科

生命は、謎に満ちている。

極限環境生命科学研究室(伊藤政博 教授)

極限環境微生物が持つハイブリッド型生物モーターに関する研究

極限環境生物(スーパーバグ)とは、深海や極地、酸やアルカリの強い環境、原油層や温泉の源泉など、生物が生きるのに過酷な状況下で生きている微生物の総称です。私の研究室の最近の成果は、微生物が持つ運動器官であるべん毛モーターからの「世界最小のハイブリッドエンジンの発見」です。このモーターは、pH10以上の高アルカリ性環境を好んで生育する好アルカリ性細菌から発見されました。このモーターの特徴は、回転エネルギーとして外環境のpH に応答して中性pH 付近では水素イオンを、水素イオン濃度が低い高アルカリ性pHではナトリウムイオンを利用することができる点です。つまり、このモーターは、外環境に応じて使いやすいエネルギーを選択できるハイブリッドモーターなのです。さらに、2012年には新たにカリウムイオンとナトリウムイオンで動くハイブリッドモーターをもつ好アルカリ性細菌を発見しました。生物型ハイブリッドモーターの研究は、べん毛モーターの直径がわずか50ナノメートルしかない“ナノマシン”であることや、現在もモーターの回転機構やイオン選択透過機構が未解決であること、さらには、環境への適応進化という方面からも注目を集めています。自然界の生き物たちは、地球の長い歴史の中で独自に進化を遂げ、我々ヒトでは考えつかない未知なるモノを生命活動に利用しています。今回発見した生物型ハイブリッドモーターをもつ好アルカリ性細菌の発見は,その一例であり,私たちは,まだまだ自然から多くのことを学び,そして,私たちの生活に役立てることができるのではないでしょうか。私の研究室では、ハイブリッド型生物モーターの研究を通して、”ナノの世界の基礎科学”を理解することにより、将来的には、生物型モーターを模倣して人工ナノ・モーターの開発などに取り組みたいと考えています。

この研究室を希望する方へ

2000年以降、日本人のノーベル賞受賞者が11名も誕生しています。いずれの研究者にも共通することは、基礎科学の研究者であり、後世の研究に大変重要な発見をした人たちだと思います。よく考えれば高校で皆さんが勉強する教科書の内容は、いずれも過去の基礎科学の基本原理の発見や発明から成り立っていると思いませんか?電話を発明したベルの言葉に次のようなものがあります。「時には踏みならされた道から離れて、森の中に入ってみなさい。そうすれば、今まで見たことのないものに出会えるに違いない。」私の研究室でも、日々、世界中の研究者達と科学の未解決な問題について競争しています。私自身は、そうした中から新たな研究の発想力を持った若い研究者を育てたいと思い、日々、学生たちと楽しく時には厳しく研究に取り組んでいます。新しい分野へ取り組む好奇心と開拓心を持つ学生を希望しています。