応用生物科学科

自然、いのちに学び、未来を拓く。

細胞分子毒性研究室(椎崎一宏 准教授)

(1) 環境化学物質の遺伝毒性に至るメカニズム解明 (2) ダイオキシン受容体(AhR)の生理的役割の探索

文明の発展に伴い、人類は何度も公害問題に悩まされてきました。健康被害が出る前に化学物質の毒性を知ることはできないのでしょうか。薬が効く仕組みである薬効メカニズムと同様に、毒性物質にも作用メカニズムがあります。毒性メカニズムが不明の物質でも、その使用や放出を行政が禁止すれば、問題の半分は解決します。しかし、日々新たに作られる化学物質の中には、その未知の毒性メカニズムを介してヒトの健康を蝕む物質が再び現れるかもしれません。本研究室では主に環境化学物質の生体に対する毒性メカニズムを解明し、それを利用した検査方法を開発することで、新規の化学物質の危険性や汚染状況をより早く知ることを目指しています。

(1) 環境化学物質の遺伝毒性に至るメカニズム解明

化学物質による健康影響で最も重篤なものは「がん」です。生体内に取り込まれた化学物質は体外に排出される過程でDNAに結合し、突然変異を引き起こすことがあります。この突然変異の蓄積が正常な細胞をがん細胞へと変化させます。本研究室では化学物質による遺伝子変異の起こりやすい配列の特徴を調べています。さらに、遺伝子に生じた突然変異が簡単に検出できるヒトの培養細胞を作出することで、新しい変異原物質同定法の開発を行っています。

(2) ダイオキシン受容体(AhR)の生理的役割の探索

ダイオキシンは人類が作り出した最も毒性の高い物質とも言われています。人体にはダイオキシンの受け手であるAhRと呼ばれるタンパク質があります。このAhRはカネミ油症事件で問題となったPCBや、タバコ煙に含まれる発がん性物質であるベンゾ[a]ピレンも結合します。このAhRを欠損させたマウスでは、ダイオキシンを曝露してもほとんど毒性反応が出ませんが、なぜか盲腸にがんができたり、免疫系が過剰に反応したり、妊娠中に胎児が死んでしまうことが分かりました。我々はこのAhRの発がん抑制や免疫寛容に対する関与を調べ、そのメカニズムを探っています。

この研究室を希望する方へ

大学を卒業した人の多くは、大学四年間が最も楽しい時期だったと言います。その理由は人それぞれでしょうが、おそらく共通していることは自由な時間の中で気の合う友達に囲まれて過ごせたからではないでしょうか。ただし、研究室では教員を含め年齢もさまざまなうえ、皆が気の合う人とは限りません。また、卒業研究に取り組めば時間が制約され、自由な時間は少なくなります。研究室ではルールを守り、集団中の役割を果たすことで組織の一員として認められること、自己を管理しながら実験を進め、結果を発表することを学んでいきます。研究室に入るには生物や化学の基礎知識に加えて、協調性と責任感、自己管理能力が必要です。卒業研究等を通じて、それらの能力を大いに高めてください。