健康栄養学科

人と社会の健康を担う、管理栄養士のちから。

多次元臨床医学研究室(髙鶴裕介 教授)

環境要因等が人体に与える超慢性影響について

多次元臨床医学は造語です。臨床医学の研究を時間的・空間的変化を考慮しながら進めていこうという考えに起因します。

我々は生まれてから死ぬまで、様々な外的環境の変化にさらされます。ライフステージによる生活環境変化(進学、就職など)、感染症をはじめとする病気への罹患(病気になることのみならず、治療に用いた薬剤や治癒後の変化)、食環境の変化(成長・老化に伴う食事内容の変化、嗜好、食品頻添加物など)、人間関係(家族、友人、同僚など)、余暇時間の使い方(スポーツ、旅行など)など、多岐にわたります。これらの変化が我々の内的環境(臓器の働き、ホルモンの働き、神経の働きなど)に影響を与え、心身の健康や生命予後を変化させます。時として、子供の頃の環境が老年期の健康を左右することもあり、このような時間的・空間的に離れた現象同士を結び付けて考えることは大変難しいです。そのため、従来の研究は慢性変化といっても数カ月程度の変化を検証するものが大半です。一部のコホート研究では多くの人の健康状態などを数年にわたって観察するものもありますが、検証するべき現象はまだまだたくさん残っています。

私の研究テーマはこのよう難解な問題を様々な研究手法を用いて検証していくことで、生涯を通じた心身の健康維持を目指すものです。これまでに動物実験や臨床データを用いた研究を行ってきましたが、本学では食にまつわる問題に焦点を当て、健康や病気に関わる食(食物、料理、食べ方や食環境)について広く研究していく方針です。分子・細胞生物学的実験、動物モデル実験、人を対象とした臨床実験など、様々な研究手法を用いて、時には世代を超えていくような変化を研究していこうと考えています。

この研究室を希望する方へ

研究に決まった解決法・解答はありません(なんでもアリ、です)。一方で、研究成果を広く認めてもらうには一定のロジック(お作法)があります。研究は楽しい時もあればつらい時もあります。目の前で起こっている現象を不思議に思い、観察する好奇心・探求心と、従来の概念にこだわらない柔軟な心を持った人を求めています。失敗を恐れず、一方で慎重に物事を勧められる人が理想です。もちろん、私自身も偉そうなことは言えません。ともに学び、成長していける「同志」を募集します。

私がかつてそうであったように、研究アイディアがある方の持ち込みを歓迎します。「多次元」に込めた思いは、面白い研究をなんでも幅広くやっていこうということなので、一見研究室の主題と外れていても、共有できるものがあればサポートします。時には学内外の研究者とも連携しながら、アイディアを形にしていく意欲のある方を望みます。