「法律を学ぶ」ということは、私たちの生活に身近な問題を解決する考え方を身につけることだ。そのためには、法知識だけを身につければよいのではなく、社会を構成するさまざまな要素を理解しておく必要がある。法学部で「マクロ経済学」を履修している学生を対象に、2013年6月に白山キャンパスで開催された「法学部特別講義『日本銀行の仕事』」の教室を訪れた。

法の周辺の学問分野を学ぶことの大切さ

法学部では、リーガルマインドと外国語の習得に重点を置いている。さらに「哲学・思想」から「自然・環境・生命」「日本と世界の文化・歴史」「現代・社会」「総合・演習」「スポーツと健康」「社会人基礎科目」といった分野の学びを通じて、幅広い教養を身につける全学共通の「基盤教育」をカリキュラムに組み込んでいる。なかでも法律を学ぶ学生にとって、社会の成り立ちを理解することは不可欠だ。法律の周辺にある「経済学」や「会計学」などの社会科学系の学問分野を学び、その理論を応用することは、法律を学ぶうえで物事のとらえ方や考え方を広げることになる。

このたびの特別講義は、基盤教育の共通教養科目の選択科目である「マクロ経済学」を履修している学生を対象に開催された。日本銀行の情報サービス局企画役・福原敏恭氏を講師に招き、日本銀行の役割や金融政策について学ぶことを目的としている。

使命は物価の安定と金融システムの安定

特別講義の様子

講義冒頭で福原氏は、2008年秋以降の世界金融危機や2010年の欧州ソブリン危機、2011年の東日本大震災といった、世界を揺るがす経済的な問題が浮上するなか、日本銀行に求められる使命は「物価の安定」と「金融システムの安定」にあると説明した。その後、「日本銀行の役割」を紹介する広報ビデオを上映し、中央銀行である日本銀行がいかにして使命を果たしているのかを解説。さらに、わが国の金融政策の現状について述べた。

講義の後は、質疑応答の時間も設けられ、受講生からは「日銀の総裁が変わると、金融政策も変わるのでしょうか?」といった質問が投げかけられた。また、受講生の多くが公務員志望者であることも考慮し、福原氏は公職に就くことの魅力や仕事のやりがいについて語り、学生への応援メッセージを送った。

いま、社会で起きていることを学びたい

特別講義の様子

講義を受講した法律学科1年の小澤奈歩さん(習志野市立習志野高校卒)は、「日本銀行の役割については、高校でも教科書で学んだことはありますが、これまでは実際の日本の金融政策と結びつけて理解することはできていませんでした。今回の特別講義は、日本銀行で実務にあたられている方が講師ということで、より具体的なお話をうかがえると期待して受講しました」と話す。

公務員試験受験を目指している小澤さんは、試験で「マクロ経済学」や「ミクロ経済学」が重要な科目であるため、その対策として両科目を履修している。

「経済学というと難しそうなイメージもありますが、実際に経済学の授業を受けてみて、経済は私たちの生活と密接なかかわりを持っていることがわかってきました。今日の講義では、日本銀行が中央銀行として、物価の安定や金融システムの運営という大切な役割を担っていることを理解できました」と満足した様子だった。小澤さんは今回が2回目の特別講義の受講だといい、前回は社会学系の講義で、薬物依存からの回復を支援する「東京ダルク」の活動について学んだ。

「法律を学ぶ私にとって、いま、社会で何が起きているのかを学ぶことは大切なこと。だからこそ、今後も特別講義に積極的に参加し、実務にあたっている方々の現場でのお話を聞き、教科書では学べない社会の“いま”について理解を深め、幅広い教養に裏打ちされた揺るがない法知識を身につけていきたいと思います」と意気込んでいた。

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