日本整形外科学会の調査によると、わが国には推計3,000万人の腰痛者がいると報告されています。腰痛を発生させる要因の一つとして、崩れた姿勢、いわゆる不良姿勢があげられます。不良姿勢では身体の上半身の重心が腰の関節よりも前に位置してしまうため、上半身は重力によって常に折り曲げられる方向に力を受けます。この力に対抗して身体は上半身を引き起こす力を発揮する必要がありますが、この時に背中側にある背筋を使うことになります。良い姿勢では背筋が適度に力を発揮して姿勢を保持することができますが、悪い姿勢では常にある程度大きな力が必要となって腰部には常に負担がかかり続けます。この負担が積み重なっていくと、あるところで限界がきて腰痛が発生するのです。
私はこのメカニズムを理解した上で、腰部負担を軽減する装着型機器を開発しました。人間工学を活用して身体のメカニズムを理解した上でデザインを行うと、さまざまな症状や障害を持つ方々を助け、ヒトの役に立つデザインを生み出すことができます。実は、このようなアイテムは、世の中にたくさん存在しています。ただしそれらを良く調べてみると、見た目はすごく格好が良くてデザイン性が良くても実際に身体の負担を減らすことができているかよくわからないものや、反対に効果はあるのに見た目が無骨なものが多くを占めます。格好よくても効果がなくては意味がなく、効果があっても使ってもらえなければ意味がありません。装着したくなるようなデザインで、かつ効果があるものを生み出す必要があります。ぜひみなさんも身の回りにある製品がどのように役立っているのか人間工学とデザインの視点から考えてみてください。

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勝平 純司教授福祉社会デザイン学部 人間環境デザイン学科

  • 専門:バイオメカニクス、人間工学
  • 掲載内容は、取材当時のものです