生命科学部では、授業の一環としてさまざまな実験実習を行います。4年生になると卒業研究に取り組みますが、その際に、実験計画の立て方や実験器具・装置の使い方と同じように必要になるのが「生物統計学」の知識とテクニックです。実験は、結果となるデータが出たらそれで終わりではありません。データを整理し解析して、さらに解釈を加えて初めて一つの実験を成し遂げたことになります。例えば研究テーマが、有用な微生物(物質K)の培養条件を工夫して、物質Kの生産量を最大化することとします。最適な培養条件を探し出すためには、複数の実験結果を比較する必要があります。そこで、培養条件Aと培養条件Bの実験結果を比べてみると、培養条件Bの方が高い数値が出ました。しかし、1回の実験結果だけでは、培養条件Bの方が最適な培養条件であると結論づけることはできません。なぜなら、微生物には個体差があり、たまたま出た数値かもしれないからです。より正確に調べるためには、繰り返し実験を行って平均値を比べ、そこから「標準偏差」を算出した上で、どちらの生産量が高いかを判断します。このようにデータについて仮定したある事柄(仮説)が正しいかどうかを判定することを、統計学的方法の「検定」といいます。「統計学的検定」に基づいて、培養条件Bの方がより高い生産量をもたらすという結論を下すことができれば、培養条件Bについてさらに詳しく調べるなど、研究や実験の方向づけをすることができます。生物統計学を学ぶことにより、生命科学部の研究に必要なデータの要約・整理する力が身につき、実験結果を客観的に判断できるようになるのです。

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吉永 淳教授生命科学部 応用生物科学科 環境保健情報学研究室

  • 専門:環境要因によるヒト健康リスクの評価
  • 掲載内容は、取材当時のものです