日本では、認知症などの判断能力が低下した人々を狙った「詐欺的商法」や「オレオレ詐欺」が社会問題になっています。これらの問題に対し、犯罪の摘発や被害者の救済に力を注ぐことも重要ですが、近年、被害を未然に防ぐための生活支援や権利を保障する「権利擁護」への関心が高まっています。「権利擁護」を論じる時のポイントは、「間接的な保護利益の享受」という視点を持つことです。一般の人は通常、詐欺罪などの刑事罰の存在や不法行為責任に基づく民事的な責任追求の可能性によって、詐欺犯罪に対する抑止力が働いた状態の中で社会生活を送っています。一方、認知症などの弱い立場に置かれた人は、その抑止力が働かない状態にあるため、常に詐欺犯罪やトラブルに巻き込まれやすいリスクを抱えています。つまり、社会的に立場の弱い人々がだまされる要因の一つは、一般的に得られるはずの「保護利益」を享受できない点にあるのです。その事実に着目した上で、どのような制度や支援が必要かを考えなければなりません。現時点では、「消費者保護法制」「消費者契約法」「特定商取引法(クーリング・オフ)」などの制度が用意されています。それにより、本人のために事後に契約解除や返品ができるようになり、詐欺被害を未然に防ぐことができます。その他には、「成年後見制度」や「日常生活自立支援事業」などを活用して個別に支援を行うことができます。誰もが生きやすい社会を実現するために、今後も社会福祉の観点から何ができるのか、どうしたら社会的弱者が自由や利益を奪われずに済むのかを議論し続けていく必要があるのです。

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秋元 美世教授社会学部 社会福祉学科

  • 専門:社会福祉法、社会保障法
  • 掲載内容は、取材当時のものです