「社会的ジレンマ」とは、「みんなが協力すれば、みんなで得をするのに、どうしても一人一人が自分のことを考えて協力できない」状態をいいます。例えば、最寄り駅まで自転車で行く場合、駅から離れた公共駐輪場に駐輪するより、駅の近くの路上に駐輪する方が楽です。しかし、もし多くの人が同じように考えて路上に駐輪すると、道路に自転車がはみ出して、通行者の迷惑になります。このとき私たちには、「協力」と「非協力」の2つの選択肢があります。つまり、路上に駐輪することは「非協力的」な行動で、公共駐輪場に駐輪することは「協力的」な行動となります。「社会的ジレンマ」の主な問題は、多くの場合、人々は個人の利益を求めて「非協力的」な行動をとりがちであるということです。この問題を解決するためには、「協力的」な行動をとる人を増やす必要がありますが、多くの研究結果によると、人々を協力行動へ導くことは難しく、明確な解決法がありません。そこで、社会心理学の観点からこの問題を解決するための糸口を探ると、「コミュニケーション」「情報」「信頼」「互恵性」「社会的規範」の5つのキーワードが見えてきます。例えば「互恵性」とは、人々が同じような行動をとることで助け合い、利益を分かち合う状況を意味します。一人一人が、「互恵性」の意識を持つようになれば、互いに協力し合うことができるようになるでしょう。このように私たちは心理学の知識を活かしながら、社会においてどのような取り組みをすべきかを考える必要があります。それは、身の回りで起こる社会問題のほとんどが、「社会的ジレンマ」に関わっているからです。

pf-oshima

大島 尚教授社会学部 社会心理学科

  • 専門:コミュニケーション、視覚的情報処理、環境配慮などにおける認知過程
  • 掲載内容は、取材当時のものです