今、子どもたちの「体験の質」が変わってきています。その背景には、「暮らし方」が影響しています。例えば、扱いが難しい反面、できた時の達成感が味わえる「ベーゴマ」に代わり、誰でも楽しく簡単にできる「ベイブレード」が開発されるなど、楽に遊べる商品がいろいろ登場しています。また、自分の責任で自由に遊べるプレーパークでは、ターザンロープが撤去されました。理由は、子どもたちが最後までロープを握れず、落下事故が多発したためです。平成10年と平成29年で9歳児の握力の平均を比べると、男女共に約1kg低下しています。子どもたちの成長を考えた時に、何かをすることで「発達促進」する一方、怪我などのリスクを考えると「停滞」する側面があります。その狭間で、保育者や養育者が何を選択するかが重要になります。保育・幼児教育の基本は、「環境」を通して行う教育です。つまり、子どもが自ら意欲を持って環境に関わり、それによって作り出される具体的な活動を通して必要な経験がなされ、幼児の望ましい発達が促されます。保育者や養育者は、どんな環境でどんな暮らし方をするか、「願い(ねらい)」を持って意図的・計画的に環境構成をする必要があります。その事例の一つが、あさかたんぽぽ保育園で行われた「ナイフを用いた保育実践」です。刃の出し入れの練習から始まり、鉛筆の削り方など、子どもたちは回を重ねるごとに使い方を習得します。最初は心配していた保護者たちも、どんどん上達する姿を目の当たりにして、「あんなに集中している姿を見たのは初めて」「思った以上に子どもたちはできるのですね」など、肯定的な意見に変わっていきました。この実践からわかるのは、子どもにとって一見危険だと思われることでも、正しくやり方を教えれば「できる」ということです。「する」から「できる」へ。「人的環境」(保護者や養育者)が、「物的環境」をどう設定しどのような体験を提供するかが、子どもたちの体験と発達を左右します。

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嶋﨑 博嗣教授ライフデザイン学部 生活支援学科 子ども支援学専攻

  • 専門:幼児健康学、幼児体育
  • 掲載内容は、取材当時のものです