すべての物質は分子で構成されています。その分子は原子で、原子は原子核と電子で構成されています。ノミやシラミが数ミリメートルで10の-3乗、赤血球が数ミクロンで10の-6乗、ナノは10の-9乗という単位で、原子のサイズが0.1ナノメートルと、この小さな世界では、肉眼で見ている私たちの世界とは時間や大きさのスケールが完全に異なっています。ナノの世界では、いくつかの電気条件下で、電子が障壁を壊すことなく通過する電子トンネリングという現象や、ある条件下で二酸化炭素に紫外線光子を照射すると、室温で炭素と酸素に解離し、カーボン粒子ができることなどがわかりました。1985年に、60個の炭素原子で構成されているサッカーボール状の物質である、C60フラーレンという分子が発見され、この性質を利用してさまざまな応用がなされてきました。例えば生物医学の分野では、磁石の性質を持ったカーボンナノチューブに酵素を含み、抗体反応を利用して、うまく標的であるがん細胞にたどり着かせることができます。また、カーボンナノチューブに蛍光分子をつけることで、がん細胞を可視化することもできました。さらに回転磁場を利用し、圧力をかけてストレスを与えることで、がん細胞を死滅させることも可能になりました。
量子力学や熱力学、分子運動学に関する統計力学だけでは知りえないナノの世界を知るために、物理や化学、生物学といった専門分野にこだわらず、ナノテクノロジーを学び、将来に役立てましょう。

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前川 透教授理工学部 生体医工学科 ナノサイエンス研究室

  • 専門:バイオ・ナノサイエンス、非線形系における自己組織化現象
  • 掲載内容は、取材当時のものです