人工知能の発達によって、歩行ロボットや自動運転などロボットの知能化が進んでいます。今後こうした賢いロボットを協力させる仕組みや方法を研究し、同時に多数のロボットを自在に操ることができれば、広い場所の探索・警備をしたり、より大きな荷物の運搬ができたりするほか、リーダーや故障したロボットの代役を買って出るようなロボットが自然と生まれるかもしれません。ロボットの活躍の場はさらに拡大し、私たちの生活がより豊かで快適になることが期待できるのです。しかし、合理的であるロボットは、互いに協力することが非常に苦手です。たとえ協力することが最良の選択であっても、裏切り者が得をする状況では互いに協力しなくなる「囚人のジレンマ」や、個人の合理的な選択が社会の最適な選択に一致せずかけ離れてしまう「社会的ジレンマ」が発生してしまうのです。そこで注目したのが、生物に見られる群れの形成です。例えばアリは、役割分担をして巨大なコロニーを維持します。鳥や魚はリーダーがいなくてもうまく群れて行動をとることができます。このような生物の群れの仕組みを模倣する「スワームロボティクス」や、生物の学習機能を模倣する「マルチエージェント強化学習」を用いてロボットに学習させたところ、状況に合わせて自分の役割を柔軟に切り替える「自律的機能分化」や、その場に応じた対処方法をとる「自律的機能生成」といった、協調行動を獲得することができました。生物の優れた機能や仕組みは、群知能ロボットへ応用することができるのです。

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山田 和明准教授理工学部 機械工学科 群知能ロボット研究室

  • 専門:人工知能、マルチロボットシステムにおける協調行動獲得に関する研究
  • 掲載内容は、取材当時のものです