発明王のトーマス・エジソンは、1877年、音を記録してあとから再現する“フォノグラフ”を発明しました。フォノグラフとは、柔らかい金属で覆われたシリンダーに声の振動で針が溝を掘っていくことで音が記録され、シリンダーを回して溝を針がなぞり、その振動が空気の振動に変換されて音が再生される、レコードの原型ともいえる装置です。エジソンは通信や電話の研究をする中で、声を記録することができないかと考えたのです。そして、エジソンは徹底したメディア戦略でフォノグラフの宣伝をし、認知度を上げていきます。出版社や新聞社に持ち込み、デモンストレーションをして記事にしてもらったり、博覧会へ出展して多くの人に体感してもらったりしたほか、ポスターや雑誌広告では用途や活用法を紹介し、カタログ発行などもしてPRに努めました。単なる発明者ではなく、ビジネスマンとしての才能もあったと言える一面です。しかし、消費者の関心は、エジソンがこだわるパーソナルメディアとしての用途ではなく音楽鑑賞などにあり、フォノグラフは衰退していきました。ところがこの技術は、プロが作った音楽コンテンツを消費する、というマスメディアのスタイルで受け入れられます。20世紀になると多くのレコード会社が設立され、音楽産業が大きく発展したのです。エジソンの発明自体は短命に終わりながらも、こうした新しい産業を生み出したという点で、その礎を作ったエジソンの功績を忘れてはなりません。さまざまなメディアが社会にどのように受容されたのかについて、学んでほしいものです。

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戸田 愼一教授社会学部 メディアコミュニケーション学科

  • 専門:図書館情報学
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