第二次世界大戦後、1960年代をピークに、ヨーロッパ諸国は戦後の産業復興のための安い労働力として、主に旧植民地から移民を受け入れてきました。現在、移民後にヨーロッパで生まれ育ちながらも、社会にうまく統合できずにテロ事件を起こすなど、移民第二世代の社会統合の遅れが問題となっています。そうしたなかで、中国系第二世代は、高学歴でホワイトカラー層に進出し、社会的に上昇している成功モデルとされますが、それはなぜでしょうか。1949年に共産党支配から香港の新界へ逃れた多くの中国人が、当時景気がよく、健康食品や中国料理のブームが起こり、仕事がしやすい環境が整っていたイギリスへ渡り、単身で働き香港の村に仕送りをしていました。1970年代に入り移民の制限が始まる頃、ちょうど中国料理のテイクアウト業が流行し始め、手が足りず家族を呼び寄せ、定住して事業を始めるようになりました。こうした背景で増えていったイギリス生まれ・育ちの中国系第二世代たちは、ほかの国の子どもたちと比べて群を抜いて良い成績でした。これは、英語も話せず教育程度の低い両親たちが、中国料理店で休む暇もなく働いている姿を見て育ち、感謝を持ちつつも、自分たちはそうならないよう、しっかり学校で学ぶことで自立し、成功しよう、そして両親を助けようと自然に考えるようになり、親たちもまた、子どもたちには堅実な仕事に就いて成功するために、しっかり学校で学ぶことを望んだ結果です。学校教育を成功のための手段として重視する成功の民俗理論は、移住後の日常生活を通して生み出されたもので、これらはほかの移民の集団にも適用でき、比較研究にもつながっているといえるのです。

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山本 須美子教授社会学部 社会文化システム学科

  • 専門:文化人類学
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