動物行動学とは、動物の行動に関するさまざまな疑問を解明する学問分野です。進化論を唱えたダーウィンをはじめ、世界には動植物の研究者がたくさんいて、動物行動学の父と呼ばれるユクスキュルは、人が見ている世界と動物が見ている世界は違う、動物の感覚世界を知ろうということを提唱しました。20世紀に入るとますます関心が高まり、動物の行動を説明する体系的な理論やモデル、詳細な観察に基づく研究などが次々と発表されるようになったのです。こうしたなか、ティンバーゲンは、動物の行動はさまざまな次元で説明することができ、動物の行動を完全に理解するためには多様な領域からのアプローチが重要であると、「4つの問い」を提唱しました。これは、直接的な原因を解く“至近要因”としての「メカニズム(特定の体の部位や臓器、その他の化学物質などがどのように働いて行動として表れているのかなど)」、「発達(個体全体や身体の一部分がどのように成長していくのかなど)」、なぜ?を解く“究極要因”である「機能(なぜその行動が、動物の生存や繁殖に役立つよう進化してきたのかなど)」、「系統(猿と人のようによく似ている行動や特徴が祖先からどのように受け継がれてきたのかなど)」の4つで、それぞれが独立して研究されるだけでなく、最近では、複数の領域が歩み寄ることで、さまざまな問題解決につながっています。ティンバーゲンの4つの問いは、行動を研究する研究者たちのなかで、今なお生きているといえます。この授業をきっかけに、動物の行動に関心を持ってもらいたいものです。

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室山 泰之教授経営学部 マーケティング学科

  • 専門:基礎生物学
  • 掲載内容は、取材当時のものです