「風景」は、心理的側面と物理的側面の二つの要素が複雑に絡み合って生成されます。景観工学の分野における風景とは何かについて考えてみましょう。風景の見え方は、何を見ているのかによって人それぞれです。また、どのように見ているのか、見方によって風景として捉えられるかどうかが決まります。山があるから山の景色、なのではなく、山を景色として見るから山の風景があるのです。自分を取り囲む環境があり、その環境を視覚的に捉え、その一部を風景として見る、ということが重要です。風景を探す手掛かりには、次のようなものがあります。場所の美しさを歌う文学、風景を観賞するために作られた庭園、眺望を享受するために設えられた清水寺のような建築、環境を表現する絵画、風景を言い表す単語や語句、風景に予定外のものが入ってしまったと気が付く明白な反省などです。風景は、眺める対象とそれを気持ちよく眺める場所の両立で成り立ちます。どこから見ているのか、気持ちよく眺められるのかといった視点場についての考慮や、どのように見せているのかという風景の見せ方も重要です。自分の敷地外の風景を取り込んだ借景という庭園の見せ方などもあります。これらをうまく合わせて考えていくと、「風景とは何か」の答えに近付くのではないでしょうか。

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神山 藍准教授理工学部 都市環境デザイン学科 景観工学・ランドスケープデザイン研究室

  • 専門:景観工学、ランドスケープデザイン
  • 掲載内容は、取材当時のものです