一般的に、小乗仏教では「一仏」を説き、大乗仏教では「諸仏」「十方諸仏」を説くとされていますが、実際には、いずれも仏教の大原則である「一世界一仏(この世にブッダは唯一人)」の中にあります。今回はブッダとは何かを学びながら、「一世界一仏」「十方諸仏」について考察してみましょう。ブッダとは、仏教の開祖として知られていますが、実は一人を指すのではなく、ある特定の種類の聖者を指す言葉、つまり称号です。そのためブッダは複数存在し、種類も正等覚者、独覚者、声聞ブッダの3つに分けられます。正等覚者は、開祖と呼ばれる人で、人から教わるのではなく自ら悟り、教えを説くと定義されます。独覚者は、人から教わらず自ら悟りますが、教えは説かないと定義されます。声聞ブッダは、仏弟子がブッダの教えを聞き、修行を完成して阿羅漢となることをいいます。また、仏教においては「一世界一仏」という考え方が大原則であるため、これらのうち、正等覚者あるいは独覚者は、この世界に一人のみで、同時に存在できないと考えられています。大乗仏教では「十方諸仏」という、銀河系を含めた世界全てにおいて、複数のブッダが存在するという考え方を掲げているため、一見すると「一世界一仏」の原則に反するように見えます。しかし、これは「一世界」が一銀河を指すか、この世界全てを指すのかという、仏教の流派(部派)の見解の相違からきており、いずれもブッダは、一銀河に二人存在しないという点で共通しています。つまり「十方諸仏」も「一世界一仏」の原則の中にあるのです。

pf-iwai.jpg

岩井 昌悟教授文学部 東洋思想文化学科

  • 専門:初期仏教
  • 掲載内容は、取材当時のものです