日本では、さまざまな限定商品が数多く販売されています。たとえば、限定醸造のビールなどの“数量限定”、特定ブランドが季節ごとに展開するお菓子などの“期間限定”、コンビニ限定のドリンクなどの“チャネル限定”、特定ブランドが観光地で展開するご当地フレーバーなどの“地域限定”などの商品です。この背景にはまず、日本人消費者としての特徴があります。欧米では、新しいものには実績がないととらえて敬遠されますが、日本人は、きれいなものを重視し、「新しいもの=良いもの」とするため、曲がったきゅうりや、箱のへこんだ家電や機械、折り目のついた雑誌などは売り物になりません。高度経済成長期を境に、便利な家電を買い揃えることで豊かさを実感した日本人は、物質的に満たされてもなお、より良い商品を探索し、次々と発売される新商品に魅力を感じ、「新しいもの」に満足を求めるのです。そのため、企業側はそれに対応した戦略をとります。スーパーや百貨店にくらべて店舗の面積が狭いコンビニエンスストアでは、売れ筋商品のみを置き、できるだけ効率を上げて商品を売ろうとします。そのためメーカーは、売れる見込みの高い商品を作る必要性があります。実績のあるブランドの新しい商品は、より良い商品だというイメージもあり、扱ってもらいやすいのです。こうした背景から、日本では限定商品がたくさん展開されているということが説明できます。

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鈴木 寛准教授経営学部 マーケティング学科

  • 専門:マーケティング、消費者行動
  • 掲載内容は、取材当時のものです