ビタミンやミネラルが摂れる、胃潰瘍や高血圧に効果がある、などといった“食べる薬”と言われるような植物が身近にたくさんあります。例えばカレーに入っている、味や風味をよくする唐辛子や生姜、クミン、コリアンダー、ナツメグ、ローレルといったスパイスやハーブは、芳香性健胃薬、辛味性健胃薬と呼ばれる生薬で、漢方薬の原料です。ほかにも、桂皮(シナモン)や、昔はおやつにもなったナツメ、薬を作っていたお寺の庭に多いシャクヤク、風邪の引き初めに効く葛根湯の葛などがよく知られているのではないでしょうか。では、桔梗の根を使って、のどの痛みに効き目がある薬を作ってみましょう。水500㎖に桔梗の根2gと甘草3gを加え、200㎖ほどになるまで煎じます。昔の人はこうした身近なもので健康を維持していたのです。次に、植物を用いた研究に目を向けると、たとえば、乱獲によって絶滅危惧種となってしまったムラサキを培養細胞にして、赤い色素を作り出すことができます。これは、世界初の植物有用物質の工業的生産です。また、絶滅を防ぐために、ジャコウソウを下草として混植し病気を防ぐなど、栽培条件を検討したり、バイオテクノロジーによる大量増殖で発芽率の低さに対応したりといった研究が、東洋大学で進められています。このように、植物について研究するためには、薬学、有機化学、農学、生物学・植物生理学、生化学・細胞工学・遺伝子工学などといった知識を集めて「植物の生命科学」を理解することが必要です。

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山本 浩文教授生命科学部 生物資源学科 植物代謝工学研究室

  • 専門:植物バイオテクノロジーによる有用物質の生産
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