世界各地の映像を容易に視聴できる現代において、私たちは、あたかも世界をよく知っているかのように思いがちです。しかし本当の世界とは、自分で考えなければ理解できるものではありません。イスラーム誕生の背景、そして環境や生態系との関わりを例に考えてみましょう。アラビア半島の中央部に、イスラーム誕生のメッカを擁するサウジアラビアがあります。その広い面積の大半を砂漠が占めています。砂漠のイメージである、“照り付ける太陽、生物がいない、熱い死の世界”は、実は昼だけのこと。夜には気温が下がり快適に過ごせるため、夜行性生物が動き出し、オアシスでは灌漑農業が行われています。また、砂ばかりで障害物がなく、月や星が良く見えるため、方角もよくわかり、とても安全です。こうした砂漠では「ラクダ隊商隊」が国際貿易に従事していたことから、7世紀のアラビア半島にはさまざまな異文化があふれ、社会も活性化し、繁栄を極めていました。その一方で、社会の混乱や秩序の崩壊ももたらされました。そこに現れたのが、「この世界はすばらしいが、秩序が必要だ」と、キリスト教をもとにイスラーム教を作った、ムハンマドでした。その後イスラーム教は伝播し、今では世界ナンバー2の大宗教となりました。イスラームの誕生にとって、砂漠という生態系が、大きな影響を持っていることがわかります。その背景を知り、どのように異文化を理解するべきかを考えていきましょう。

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三沢 伸生教授社会学部 社会文化システム学科

  • 専門:中東社会経済史
  • 掲載内容は、取材当時のものです