企業金融、中でも“投資政策”の重要性について、東京スカイツリーを例にお話しします。負債を抱えていた東武鉄道は、長年の経験に基づくノウハウと、もともと自社で保有していた土地を有効活用して、東京スカイツリーを中心とした、商業施設やオフィスの複合施設「東京スカイツリータウン」を開業しました。タワー業への参入で、地デジ電波塔使用料での安定収入や、展望台の観光収入での増収を見込み、不動産業、レジャー産業など他事業の収益向上といった新たな成長戦略に向け、この投資プロジェクトを検討したのです。これは、大規模な投資政策として注目されました。投資の理論では、投資によって得られる将来収益の予想額を、現時点での価値(現在価格)に置き換えて考えます。実行するプロジェクトの現在価値から投資額を引いたものを正味現在価格(NPV)と言い、これが投資の判断材料になります。スカイツリー事業の場合、タワーについては電波塔使用料、展望台の営業利益などで投資可とされましたが、周辺の商業施設やオフィスの賃貸料利益はマイナスであると算出されました。しかし、東武鉄道の利用増や、関連するグッズやお土産の販売による増収など、鉄道業ゆえのシナジー効果も生まれ、予想以上の結果をもたらしたのです。このように、収益の見込める事業への投資政策やその的確な判断が、企業の成長性を向上させます。個々の企業が得意分野を活かし、収益力向上につながる投資政策を見つけていくことが重要です。日々、企業金融にかかわる題材には事欠きません。企業金融について学び、理論だけの理解にとどまらず、現実の問題と結びつけて考えていきましょう。

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堀田 真理准教授経営学部 会計ファイナンス学科

  • 専門:応用ミクロ経済学、コーポレートファイナンス
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