経済学において生産とは、「労働(人やその賃金)」や「資本(建物や機械)」といった生産要素を投入して生産物を生み出す行為をさします。そして、その生産要素が低価格であれば、コストが低減されます。そのため先進国では、労働よりも相対的に安い資本をより多く使用し、途上国では、資本よりも安い労働を多く使用します。しかし、資本を増やしていくことはできても、労働には限界があるため、途上国では先進国の先端的な技術を取り入れ、自国の実情に合わせて移転・改良していきました。これが「技術革新」であり「経済発展」の大きな原動力となるのです。
明治時代に入り、世界各国より格段に低かった日本の所得水準は、機械を使用する欧米の生産方法を改良して取り入れたことで、他国との格差を減らしていきました。例えば「人力車」は、江戸時代に用いられていたかごに比べると、「労働」は二人から一人に減りますが、「資本」は座席や車輪がついて、輸送人数も増えます。人力車は西洋の馬車のように馬や大きな座席を必要としないため、当時の日本の実情に合わせて急速に普及していきました。日本の人力車はその後、アジア各地にも輸出され、インドなどではオートバイに座席が付いたものが現れるなど、今でも進化し続けています。その一方で、日本では経済発展がさらに進み、人力車が発展することはなくなりました。それがなぜなのかを考えてみましょう。

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藤井 信幸教授経済学部 国際経済学科

  • 専門:日本経済史
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