「糖」は甘味料やエネルギーの源として知られていますが、細胞と細胞の間の接着現象などに大切な役割があることが分かってきました。私たち人間は多細胞生物です。細胞と細胞がどのように認識し合っているのかはとても大切なことです。
生体の中に存在する糖は何十種類もあり、それらがさまざまに連結することで、無限の種類の形のオリゴ糖や多糖といった「糖鎖」を作り出します。糖鎖は細胞膜上や糖タンパク質などいろいろな場所に存在しますが、そこでの糖の役割や機能はまだほとんど分かっていません。それでも、細胞同士の認識や接着に役立っていること、ガン細胞やインフルエンザウイルスの増殖に関与していることが分かっています。つまり、糖についてもっと解明していけば、将来的にガンの転移やインフルエンザ感染を予防する仕組みを構築することができるかもしれないのです。また、生体がなぜ糖を認識素子として利用するようになったのかも解明されていませんが、多くの科学者は糖鎖の集合体である糖クラスターに注目しており、それを証明するものとして免疫のメカニズムが挙げられます。
このように、糖は人間の体で非常に大切な役割を担っている分子でありながら、解明されていないことがたくさんあります。そのような未開の分野であるからこそ、面白い学問なのです。

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長谷川 輝明教授生命科学部 生物資源学科 糖質材料創成学研究室

  • 専門:複合化学/生体関連化学、複合化学/高分子化学
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