災害発生時などに、気象庁や気象台が発表する「防災気象情報」が、“一次情報”として個人でも入手可能になっている今、“二次情報”として自治体判断で出される「避難勧告」等の役割はあるのでしょうか。近年、自治体は「低頻度戦略」を取り、避難勧告等の発表に慎重になるあまり、重要な情報を見逃し被害が発生する事例が多発しています。一方、内閣府は、「避難勧告等は空振りを恐れず早めにたくさん出す」という「高頻度戦略」の基本方針を出しています。しかし、繰り返される空振りを人々は許容できるでしょうか。また、避難勧告等に鈍感になるなど、警告に対する信頼性の低下は防げるでしょうか。
そこで、避難勧告等の空振りと見逃しが避難行動の意思決定に及ぼす影響を、簡単な心理実験で検証した結果、避難勧告自体効果が薄く、むしろ逆効果だと言える状況であることが分かりました。それならば、低頻度か高頻度かといった議論ではなく、例えば「避難勧告」を「防災気象情報発表のお知らせ」「避難所開設のお知らせ」に名称変更するなど、避難勧告への待ちや依存からの脱却を促し、主体的な態度が必須となるような環境を作ってはどうでしょう。「地震予知は可能」ではなく「地震予知は困難」とする、「河川の氾濫は起こさせない」のではなく「氾濫を前提に対策を」など、技術的限界を含め、謙虚で正直な態度も必要です。こうした「避難勧告廃止論」や「行動指南型情報」から「状況通告型情報」への転換も、選択肢の1つとして考えてみる必要があるのではないかと思います。

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及川 康准教授理工学部 都市環境デザイン学科

  • 専門:災害社会工学、土木計画学
  • 掲載内容は、取材当時のものです