大学で学ぶ「化学」は、研究対象の物質によって分野が分かれていますが、「分析化学」とは、今まで調べられなかったさまざまな物質について、調べる方法を作ることを指します。近年「マイクロ流体デバイス」と呼ばれる、髪の毛ほどの太さの「マイクロ流路」を用いた、非常に小さな装置での研究が盛んに取り組まれるようになりました。その理由の1つに、装置が小さいため、分析に必要な時間が短く、試料・試薬・廃液が少なくて済むことが挙げられます。もう1つ理由としては、実際の血管とサイズや流れがほぼ同じなので、モデルとして適していることが挙げられます。その例として、ここではナノ薬剤の研究への応用を紹介します。正常であれば結合している細胞も、腫瘍の近くでは細胞に隙間ができてしまい、血管に穴が開いてしまう、ということを利用し、抗がん剤を含んだナノ薬剤が腫瘍のある箇所で血管外に漏れ出し、効果を発揮する、という研究をしました。腫瘍だけに薬剤が届くため効率がよく、また副作用が少ないのです。
こうした研究によって開発されたマイクロ流体デバイスは、新聞に取り上げられ、高い評価を得ており、近く実用化を目指しています。薬学や医学といった、化学とは異なる分野とも大きく関わる分析化学は、人類の未来を拓くといえます。これらの研究の成果を社会に還元し、世のため人のために役に立つことを視野に入れ、今後も研究を続けていきましょう。

pf_sasaki.jpg

佐々木 直樹准教授理工学部 応用化学科

  • 専門:分析化学、物理化学、ナノマイクロシステム
  • 掲載内容は、取材当時のものです