「法の経済分析」は、法に関わる思想、活動、制度、現象を「経済学」の観点から考える学問です。法学では、法が正しく運用され、正義や公平に適合し、過去の判例に合致していると「良い法」であると判断されますが、経済学的には、法が社会にどのような影響を与えていて、世の中をより良くするものなのかどうかという考え方をします。そのため、経済学の観点から「良い法」を開発・導入するためには、社会について理解し、法の効果について分析する必要があると言えます。
例えば、多発する交通事故や悲惨な死傷者を減らすために「シートベルトの着用」が義務化されましたが、実際のデータによると、運転者の死亡率は下がったものの、歩行者の死亡率は不変かむしろ上昇しました。これは、シートベルトの着用で「自分は安全」と運転者が安心し、かえって危険運転の増加を招いたのではないかと分析することができます。
こうした「法の経済分析」は、法が見落としていた効果を明らかにするという側面を持ち、法に関わるあらゆる応用範囲で影響力を発揮しています。社会にとって本当に「良い法」を導入するためには、経済学の観点からの考察が重要です。経済を学ぶ学生には「法」もきちんと学び、やや難しいながらも非常に重要で面白い領域である「法の経済分析」について、知ってもらいたいものです。

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加賀見 一彰教授経済学部 総合政策学科

  • 専門:経済理論、制度の経済学
  • 掲載内容は、取材当時のものです