外国語を学ぶことは異文化理解につながりますが、そこには落とし穴があります。例えばパンはドイツ語でBrot(ブロート)ですが、ドイツ人の思うパンとは、日本人が思い浮かべる食パンやロールパンではありません。つまり、パン=ブロートとはいえないということになります。
また、“liebes Brot”(リーベス ブロート)を直訳すると「愛らしいパン、愛しいパン」という意味になりますが、日本人にはあまりにピンと来ない表現です。これを日本人にもわかるように訳すと、「ごはん(御飯)」ではないでしょうか。御飯の「御」は丁寧語ですが、私たちは日頃それを意識せずに使っており、ほとんど「飯」と一体化しています。「愛らしいパン」も同様です。
このように、「訳したものの、どうも意味がわからない」のは、単語の意味はわかっていても文脈(文化的な背景、脈絡)を見失っているためです。文脈を読み取ることは、異文化への非常に大切なアプローチです。外国語を楽しみながら母語を学び直し、異文化理解への道を深めていきましょう。

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山室 信高准教授経済学部 総合政策学科

  • 専門:近代ドイツ文学、ドイツ思想史
  • 掲載内容は、取材当時のものです