多民族、多言語、多宗教国家であるインドにおいて、ヒンドゥー教徒は人口の8割を占めますが、イスラーム教人口数でも世界第2位です。ヒンドゥー教は多元的な存在を認めるという信仰や、バクティと呼ばれる信愛の教義があり、他宗派に対してもとても寛容的です。また、13~18世紀にかけて北インドを支配したイスラーム政権は、ヒンドゥー教徒との融和策に積極的でした。こうしてさまざまなものが入り混じった文化が形成され、両者は共生していたといえるでしょう。
しかし18世紀になると、イギリスによる植民地の下、人々が団結して反抗することができないようにするため、宗教集団が細かく分けられるようになりました。これにより、20世紀になるとインド国内で宗教間の対立が起こります。1980年代になるとヒンドゥー教ナショナリストが台頭、1992年12月には約15万人の暴徒がモスクを完全に破壊するというアヨーディヤー事件が起きました。以後、モスクが隣接するヒンドゥー教の寺院は厳重警戒が敷かれ、聖地と呼ぶにはふさわしくない状況にあります。現在は対立が続いていますが、かつては共生できていた異なる宗教です。どうしたら共生できるのか、みなさんにも考えていただきたいと思います。

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橋本 泰元教授文学部 東洋思想文化学科

  • 専門:文学、各国文学・文学論・印度哲学・仏教学
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