現在の決定は、過去の歴史的な出来事に影響を受けてます。そのため、現在を知るためには過去を知ることが大切ですが、これは簡単なことではありません。「産業革命」を例にして考えてみましょう。
「産業革命」は工業化の出発点と見ることができます。大量にものを作る社会は産業革命によって生まれたのです。1881年に産業革命という言葉を初めて用いた経済学者のトインビーは、「産業革命は、多くの貧苦者が出現した原因である」と考えました。ところが20世紀になると、ロストウが「産業革命は豊かさの出発点である」と唱えます。さらに1985年、クラフツは「そもそも産業革命の時代のイギリスの経済成長はそれほど高くない」と、経済成長率を下方修正しました。「産業革命が工業化の出発点」という認識自体を否定したのです。
では「産業革命」は存在しなかったのでしょうか? この時期のイギリスの経済成長には地域差があり、イギリス全土にわたるものではなかったのです。
このように、歴史を見る目は時代によって変化します。ですから、過去を見ることが現在をどう理解するかにもつながっていくのです。

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道重 一郎教授経済学部 国際経済学科

  • 専門:経済学、経済史

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