環境に関する議論は情緒的なものになりがちですが、客観的な正しい評価をし、環境対策の効果を数字で表すことが必要です。そこで注目されているのがLCA(ライフサイクルアセスメント)です。これは製品やサービスが環境に与える影響について、生産から廃棄までを通じて評価することです。
たとえば日本の人工林の林齢別面積を見ると、戦後の拡大造林政策によって植林された人工林が収穫期を迎えていますが、林業の低迷によって放置されている森林が目立ちます。若い木は成長が早い分、CO2も多く吸収します。現在はCO2吸収能力の高い人工林が多いものの、この吸収能力は今後低下していくと想定されます。国産材利用によるCO2吸収量の変化を見ると、外国産材を利用せず国産材利用率100%にしても、吸収量は現状水準の4割程度で、現状水準の維持には国産材利用率を300%にする必要があります。このように、LCAの考え方に基づいて環境対策の効果を数値で表すことで、効率的な環境対策の実現に向けた議論の材料を提供することができます。

pf_murano.jpg

村野 昭人教授理工学部 都市環境デザイン学科 循環評価システム研究室

  • 専門:環境システム工学、木質資源を始めとする循環利用技術の環境影響評価

  • 掲載内容は、取材当時のものです