糖とは主要なエネルギー源であり炭水化物とも呼ばれているもので、「糖鎖」という生体内の構成成分としても機能しています。糖鎖は単糖が数個から数十個つながった生体物質で、糖鎖という形態を取ることによって、エネルギーや細胞と細胞のコミュニケーションに利用されています。血液型を決めているのも糖鎖ですし、がんの転移やウイルス感染などの疾患、タンパク質機能の構造安定化や輸送などにも関与しています。また、大腸菌とヒトのスケールには大きな差がありますが、ゲノムで見るとヒトは大腸菌の545倍、遺伝子数に至っては5.1倍の差しかありません。これほど小さな差しかないのにスケールには大きな差が生じている、この生命の多様性を生み出すのにも糖鎖が活躍しているのです。
生物が誕生する前から単糖類は地球に存在しており、生物は高等進化を遂げるために糖を改編していきました。つまり、糖鎖は生命の発祥や進化の過程を反映しているので、糖や糖鎖を理解すると「生命起源と進化との関係」がわかります。糖の研究は生命を知ることにもつながるのです。

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宮西 伸光教授食環境科学部 食環境科学科 糖質生命機能科学研究室

  • 専門:糖科学、食品化学、バイオセンサ、糖関連タンパク質、酵素工学

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