中国の詩人とは、読み書きができる「知識人」のことを意味します。そのため、恋愛について美しくうたえばよいというものではなく、詩は作者の「志」を表すものとされました。
とはいえ、昔の儒教社会の知識人は堅苦しい議論ばかりしていたわけではありません。ユーモアあふれる作品も数多く残しているのです。
たとえば、司馬遷が編纂した歴史書『史記』の「滑稽列伝」には、愛馬を大夫の格式で葬ろうとする王に対し、優孟という人物が「大夫の格式では貧弱だから王者の格式で葬ってください。そうすれば諸侯の方々が、王は人間を卑しみ、馬を尊ぶ人物だとわかるでしょう」と進言し、王が過ちに気づくという話があります。当時の「滑稽」とは、笑いの中に風刺を込めているという特徴がありました。
一方、風刺の役割を持たない詩もあります。妻への思いを「今頃、妻は私を思い出してくしゃみしていることだろう」というオチで表現した知識人もいました。
この授業では、1000年以上前の知識人の感性や個性を中国古典詩から読み取り、そのユーモアの片鱗に触れます。

profile_0009_sakai.jpg

坂井 多穂子准教授文学部 東洋思想文化学科

  • 専門:唐宋文学・文人論学

  • 掲載内容は、取材当時のものです