「研究で大切なのは、結果を得ること。しかし、その結果に向かって挑戦や努力を重ね、粘り強く取り組む姿勢を身に付けることも同様に大切」と話す大学院理工学研究科機能システム専攻の岳明(ガク メイ)さん。大学4年生から所属した機能材料研究室では、学部で学んだ専門分野とは違った分野に飛び込み、研究に取り組みました。学部卒業にあたり、就職か進学かを悩みながら、せっかく始めた研究を中途半端に終わらせたくないと、大学院へ進みました。2年間の大学院での学びを経て、いよいよ社会へ出る岳さんは、世界を舞台に仕事をしていきたいという目標の実現に向けて、今、新たな一歩を踏み出そうとしています。

建学の理念に共感し、東洋大学に進学

私は2006年に中国・北京の中国国際展覧センターで開催された北京モーターショーを訪れ、日本の自動車産業の強さと工業機械の技術に大きな衝撃を受けました。もちろん日本の自動車メーカーの名前は以前から知っていましたが、これほどまでに技術が高いとは思ってもいなかったのです。燃費の良さや車体の軽量さに圧倒されました。このことがきっかけとなり、地球環境を考え、人に感動を与えるエコカーを開発したいと考えるようになり、日本への留学を決めました。

大学を選ぶ際には、東洋大学が100年以上の歴史を持つ総合大学であることはもちろん、「諸学の基礎は哲学にあり」「多様な価値観を学習し理解するとともに、自己の哲学(人生観・世界観)を持つ人間を育成する」という建学の理念に共感し、この大学で学びたいとの思いを強くしました。また、海外の大学や研究センターで活躍した教授や研究員が多数在籍しているため、国際的な視野を育むには最適な学びの環境であると感じました。

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研究を続けるため大学院へ

私は現在、大学院理工学研究科機能システム専攻に在籍し、機能材料研究室に所属しています。「C12A7結晶の生成と色素増感型太陽電池への応用」に関する研究に取り組んでいます。色素増感型太陽電池とは、酸化物半導体や有機色素を利用する有機太陽電池の一種です。現在、色素増感型太陽電池はまだシリコン型太陽電池よりも性能が低いものの、幅広い可能性があることに興味を持ち、その性能向上をテーマとして卒業研究に取り組んできました。なかでも、エレクトライドC12A7の物性の新奇性に着目し、色素増感型太陽電池の発電効率向上を目指して研究を進めています。こうしたテーマで研究を始めたのは大学4年生になり、研究室に配属されてからのことです。私は北京出身ですが、大気汚染は深刻な問題であり、自然エネルギーの中でも日常生活と密接な関係を持つ太陽光発電に興味を持ったことがきっかけでした。

しかし、私は学部在学中、現在の研究テーマとは離れた機械系の分野を専門に学んでいました。そのため、研究室配属当初は知識不足もあって、電流さえ流すことができませんでした。それでも、研究室で同じテーマについて研究している先輩と協力し合いながら、意見交換を重ね、試行錯誤を繰り返しました。その間にも多くの学術論文などを読み、積極的に新しい知識を取り入れました。その結果、電流は流せるようになったものの、大学4年の1年間では十分に性能を上げるところまでは到達することができませんでした。それでも、研究に手応えは感じており、このまま研究を続ければ必ずより効果が上がると確信がありました。そこで、学部卒業後に就職はせず、大学院に進み、研究を続けてきました。学問だけに専念できる期間は、人生でも限られています。学ぶことが許されている時期に存分に学びたいという思いもあったのです。

研究においては結果を出すことも大切ですが、その過程で得るものは大きいはず。私は1つの研究に打ち込むことで粘り強さやチャレンジ精神を養うことも、研究の結果を得ることと同様に大切なことだと考えていました。これまでの研究を通じて、未経験のことでも向上心を持ってあきらめず、可能なリソースを使って取り組み続ける力を身に付けることができました。

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日本から世界へ技術を発信できる技術者に

私は視野を広げ、競争力を向上させ、人生のオプションを増やすという目的を持って、留学をしました。大学院を卒業してこのまま帰国したら、せっかく開けた世界や可能性が狭まってしまうのではないかと思い、今後も日本に残り、働き続けようと考えました。そのため、就職活動では中国に支店のある企業という観点から会社を探すことはせず、グローバル展開をする技術力の高い会社で働きたいという思いを実現できる会社を探しました。そして、縁あって自分が求めていた会社から内定をいただくことができました。

今後は大学や大学院で身に付けた専門知識と技術を生かして、お客様や社会が抱える課題に技術者として素早く対応し、日本から世界へ技術を発信していけるようになることが目標です。そして、英語の勉強にもますます力を入れ、国際社会で活躍できる素地づくりに励みたいと思っています。

岳 明(ガク メイ)さん大学院理工学研究科 機能システム専攻 2年

  • 所属ゼミナール/研究室:機能材料研究室
  • 出身国:中国

  • 掲載内容は、取材当時のものです